平成12年3月より国を挙げて第3次「健康日本21」の推進が始まった。国民の健康づくり対策として、「がん、心臓病、脳卒中、糖尿病等の生活習慣病やその原因となる生活習慣の改善等に関する課題を設定し、2010年までを目途とした目標等を提示、行政のみならず広く国民の健康づくりを支援する民間団体等の参加協力を得ながら、国民が主体的に取り組める健康づくり運動を綜合的に推進していくこととした。」と高らかに謳いあげ、健康づくりに関する意識の向上と取組みを促そうとするものを述べている。
目標は、運動の実施主体において、運動の目標を参考に、実情に応じて目標が設定されるべきとし、今回提示した目標については適宜、拡充もしくは見直しを行うことにしている。設定の考え方は、1.栄養・食生活 2.身体活動・運動 3.休養・こころの健康づくり 4.たばこ 5.アルコール 6.歯の健康 7.糖尿病 8.循環器病 9.ガンとなっている。計画の策定は、都道府県が具体的に地方計画(市町村)につくらせることとなった。このため、最近とみに問題化されてきているたばこの害について、地域で具体的利害関係が存在し、業界などの圧力に屈した姿勢に目標設定が曖昧にされ、運動の行き先が心配されている。
「たばこを吸って病気になるのは自業自得だ」と言う意見があるがこれは全く正しくない。ガンや循環器病など多くの疾患との関連や、妊娠に関連した異常危険因子でもある。従って「健康日本21」で謳った「成人の喫煙率半減」の目標は、たばこによって増えた死亡者数は年間9万5千人で医療費も1兆2千億円にのぼるとして 1.成人の喫煙率(男性52.8%、女性22.4%)の半減、 2.平成10年15歳以上実績1人当たりたばこの年間消費量3152本の半減、 3.未成年者の喫煙ゼロが掲げられた。そのためたばこの健康影響についての十分な知識の普及、未成年者の喫煙防止(防煙)、受動喫煙の害を排除し、減少させるための環境づくり(分煙)、禁煙希望者に対する禁煙支援の設定は正しかった。
たばこは更に「受動喫煙」が問題である。たばこの煙だけでなくたばこに含まれる発ガン物質は浮遊粒子の中にあるニコチンがその目標となる。そのため喫煙後は換気が必要であり同室での分煙は意味を持たないとしている。このようにたばこの害は、国民の健康づくりの上で避けて通れない問題といえる。然るに多くの自治体は健康づくりの目標設定に当たってたばこの削減計画は、日本たばこ産業やたばこ耕作組合など業界関係者から反対意見が寄せられたほか、自民党農林部会などからも反対の決議がされた。そのため厚生省は健康と喫煙との高い因果関係を曖昧にし「喫煙率半減」を削除した上での目標設定となった。
アメリカではたばこの害について、1960年代以降医療費求償訴訟がアメリカの州政府とたばこ会社で行われてきた。1994年連邦議会下院健康環境小委員会においてのたばこ会社7社の最高経営責任者はニコチンの依存性があることを知りながら宣誓をした上で「依存性がない」と嘘の証言をした。ところが内部告発によりたばこの依存性を高める添加物の使用が明らかにされ、「喫煙の有害性を認識していた」ことがわかり裁判で負け知らずだったたばこ会社は、1998年11月総額2060億ドル(約24兆円)と言う天文学的賠償金を46州に支払うことで和解に合意した。敗訴によってアメリカの訴訟と関係の無い日本のたばこ産業会社も高額の和解金を払っている。
小売定価(20本) |
250円の場合
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260円の場合
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消費税額(A)
(5%) |
11.90円
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12.38円
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消費税抜き小売価格 |
238.10円
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247.62円
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たばこ税額内訳
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国税 |
たばこ税 |
54.32円
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54.32円
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たばこ税
特別税 |
16.40円
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16.40円
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合計 |
70.72円
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70.72円
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地方税 |
道府県
たばこ税
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17.36円
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17.36円
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市町税
たばこ税 |
53.36円
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53.36円
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合計 |
70.72円
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70.72円
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たばこ税合計
(B) |
141.44円
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141.44円
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負担割合 |
59.4%
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57.1%
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合計税額
(A)+(B) |
153.34円
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153.82円
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負担割合 |
61.3%
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59.2%
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たばこが原因で発病した喘息や肺がんなどの治療費はドイツでは年間3兆5千億円、米国では7兆3千億円を要していると具体的数字をはじきだしている。香港政府は今年6月21日、バーやカラオケ店を含む全飲食店を禁煙とする喫煙条例改正案をまとめた。飲食業界は、中国本土に顧客が流れ、売上が大幅にダウンすると猛反発している。改正案は飲食店の他、オフィスや学校も禁煙としている。但し、実施までに半年から1年の猶予期間が設けられている。香港政府は99年に喫煙が原因の疾病に対して支出した医療費7億9700万香港ドル(約123億2千万円)の削減効果も期待していると報道されているなど世界の趨勢は健康を害するたばこに対して厳しい対応で望んでいる。
たばこについて日本政府は、国際社会の動きに反し若者や女性に多数の患者を作り出している元凶といえる。第一に、先進諸国では例を見ないマスメディアを大々的に活用した宣伝により、財政収入確保を目的としているが、先進国でたばこのCMを流しているのは日本だけである。
このことからまずCM案を禁止すべきである。第二に、手軽に手にすることが出来る自販機がところかなわず設置されている。未成年者の喫煙を規制する対面販売も重要である。日本のたばこによる税収は年間2兆円強といわれている。たばこによる損失は膨大で日本の喫煙人口はドイツの1.4倍、米国の0.6倍である。日本の医療費や失火による損失の公式数字はないが推計で年間3兆円から4兆5千億円と言われる。これではたばこの税収に期待するのは割りに合わないだけでなく、禁煙者にとってその医療費等を負担させられるのは間尺に合わないという考えもでてくる。
そもそも健康・生命を危うくしその税収を一般財政収入とする発想した使い方には為政者として問題があるといえよう。せめて国民の健康・生命に関る医療費として国も地方自治体も税収を使用すべきである。更に言えば、自民党の亀井前政調会長は2000年税制改正で、たばこ税を1本当たり2円程度増税すれば5千億円の増収が見込めると述べている。たばこに占める税の構成は、1箱20本250円の場合、たばこ特別税17円、国たばこ税62円、市町村たばこ税48円、県たばこ税14円、消費税12円で計約153円と60%以上が税金である。実質の課税の仕方は従量税でたばこ1000本当たり、たばこ税2716円、たばこ特別税820円、都道府県たばこ税868円、市町村たばこ税2668円である。たばこは国税と地方税を合わせて現在2兆円強の税収となっている。
健康と生命を害するたばこを全面的に禁止することが難しいのであれば、例えば販売価格を2倍にし、実質経費以外を目的税とし医療費に使えば、消費税を当てにせずとも老人医療費も十分賄えるし、高齢者医療費制度ももっと時間をかけて検討することも出来る。これで禁煙する人が何人かでもでれば、医療費も節約できるし、失火による損失も減らすことが出来る。健康にもなると言うことで一石二鳥にもなり大変喜ばしいことではなかろうか。この点からも厚労省はたばこの税収を医療や健康づくりに活用することを強く主張すべきと考えるが如何であろうか。国民の健康を担当する医師の団体として、この問題にも深く関っていくべき時であろう。
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