花粉症の"源"構造解明 副作用少ない治療薬も 
京大、細胞膜タンパク質

  花粉などの刺激により体内で放出された炎症物質と結合し、花粉症などのアレルギー症状を引き起こすタンパク質「ヒスタミンH1受容体」(H1R)の立体構造を京都大や九州大、米スクリプス研究所のチームが世界で初めて解明し、22日付英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

 H1Rは、花粉症の治療薬が作用する標的タンパク質。チームの島村達郎(しまむら・たつろう)京大特定講師は「この構造を基に、効率的に副作用を少なくする抗ヒスタミン薬の開発が可能になる」としている。

 くしゃみや鼻水などのアレルギー症状は、体内のヒスタミンなどの炎症物質が、細胞膜にあるH1Rに結合して引き起こされる。

 花粉症を治療する抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンがH1Rに結合するのを阻止して、症状を抑えている。しかし抗ヒスタミン薬はH1R以外の受容体にも結合しやすく、眠気や口の渇き、不整脈などの副作用も起こす。

 チームはH1Rを酵母を使って大量に精製。細胞膜に似た環境をつくって結晶化し、エックス線を用いた構造解析で解明した。H1Rの立体構造を明らかにし、結合部分の分子レベルの"形"を突き止めたことで、H1Rにだけ結合する治療薬の設計が可能になる。

 膜タンパク質のH1Rは水になじむ部分と油になじむ部分があり、水に溶けやすい細胞内のタンパク質と違い、タンパク質の精製や結晶化が難しく、立体構造が解明されていなかった。

2011.06.23 記事提供:共同通信社