脳出血起こす虫歯菌…高血圧・喫煙は特に危険
脳出血を引き起こす危険性が高い特殊な虫歯菌を、大阪大の和田孝一郎准教授らが見つけた。
この菌に感染した人が高血圧になったり喫煙したりすると、発症率が高まるという。28日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版で発表した。
この虫歯菌は、皮膚や骨などになるコラーゲンと結合するたんぱく質を作る特殊な種類。脳出血患者74人を調べると27%が感染していた。健康な35人でも9%が感染しており、両者を分析すると、この菌に感染することで脳出血の危険性は4倍高まることわかった。
和田准教授らは、人から採取したこの菌をマウスに感染させて実験。脳の血管内皮に傷をつけると、この菌が下層のコラーゲン繊維にどんどん集まり、血小板による傷の修復が間に合わず出血を起こした。
この菌があってもすぐに脳出血を起こすわけではないが、高血圧や加齢、ストレス、喫煙などで血管内皮が弱ったり、傷ついたりすると、発症率が上がるとみられる。和田准教授らは、菌を検出する簡易な用具の開発を1年後をめざして進めており、除菌方法の研究にも取り組む。
虫歯菌で脳出血リスク4倍 大阪大、日本人の8%
口の中で虫歯の原因となる「ミュータンス菌」の一種が脳出血のリスクを約4倍に高めることを大阪大や浜松医科大、横浜市立大などのチームが突き止め、27日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ電子版に掲載された。脳出血の新たな危険因子とみられ、予防や治療薬の開発につながる成果。
ミュータンス菌は日本人の60〜70%が保菌。チームは、ミュータンス菌のうち「コラーゲン結合タンパク質」を持っている特定の菌に着目。このタイプの菌は日本人の約8%が持ち、脳出血の患者では約30%が保菌していた。発症リスクは約4倍になる計算。菌は口移しなどで母子感染する恐れもある。
特殊な光で血管を傷つけたマウスに、患者の唾液から採取した菌を投与すると、投与しないマウスと比べ脳出血の面積が5〜6倍に拡大。高血圧のラットでは約7倍広がった。血管の傷に菌のコラーゲン結合タンパク質が集まり、血管の修復を妨げ出血が増えていた。
健康な人が保菌していても問題ないが、高血圧やストレス、老化、喫煙などで血管が弱ると脳出血を起こしやすくなる。チームの和田孝一郎(わだ・こういちろう)大阪大准教授は「このタイプの菌を持っていたら、生活習慣に気を付けたり、子にうつさないようにしたりするなどの対処が必要だ」と話している。