中国内陸部から飛来する黄砂に含まれるニッケルが、肌のアレルギーを引き起こすことが、鳥取大学医学部の大西一成助教(33)の研究で分かった。
黄砂の影響で、目や肌のかゆみ、鼻炎、喉の痛みなどのアレルギーを引き起こすことは知られているが、肌のアレルギーがニッケルによる金属アレルギーと実証されたのは初めてという。また、大西助教は、黄砂の飛来経路を特定し、経路によって黄砂に含まれる汚染物質の成分や量も異なることも解明。物質によって引き起こされるアレルギーが異なることから、症状ごとに患者が対策を取れるように、将来、「黄砂予報」が出せるように研究を進めるという。
鳥取大学では2007年から鳥取砂丘(鳥取市)などの乾燥地についての研究を行っており、大西助教は08年からモンゴルのゴビ砂漠付近などから飛来する黄砂の健康への影響を調査。08年2-5月と09年2-5月、11年10、11月に米子市内の計約100人を対象に黄砂が飛来する日の自覚症状についてアンケートを行った。県衛生環境研究所が分析した黄砂の成分データを基に症状との相関関係を調べたところ、黄砂に含まれるニッケルの割合が多い日は肌のアレルギー症状を起こす人が増えることが判明。黄砂に含まれるニッケルによる金属アレルギーと実証された。この結果をまとめた大西助教の論文は昨年10月、英国の科学雑誌に評価され、掲載された。
大西助教は「金属アレルギーのある人は、黄砂が飛来した時に肌がかゆくなるなどの症状が出るケースがあるので、黄砂の日は肌の露出を抑え、家に帰ったら洗顔やシャワーを浴びるなどして対策を心がけてほしい」と呼びかけている。
また、大西助教は黄砂の飛来経路も米航空宇宙局(NASA)の人工衛星による写真などで特定。経路には▽中国の重工業地帯を通る西よりの経路▽ゴビ砂漠を発生源として中国の工業地帯を通る東よりの経路▽ゴビ砂漠から中国の北方を通って朝鮮半島を通る経路--の3パターンがあるとした。重工業地帯を通る黄砂は硫黄酸化物、鉛などの汚染物質が多く、健康への影響が大きいとみられる一方、朝鮮半島を通る経路では、汚染物質は少ないという。
大西助教と共に黄砂の研究をしている同大学医学部健康政策医学分野の黒沢洋一教授(54)は「経路によってアレルギーを引き起こす汚染物質などが異なるのが分かったので、この研究を基に経路を事前に調べて、細やかな『黄砂予報』が出せるようにして、黄砂で苦しむ人を減らしていきたい」と話している。(大橋裕和)