心筋梗塞抑制ホルモン特定 脂肪細胞が分泌、名大
 

 脂肪細胞が分泌する「CTRP9」と呼ばれるホルモンが、心筋梗塞の抑制に効果があることを名古屋大大学院医学系研究科の大内乗有(おおうち・のりゆき)教授らの研究グループがマウスの実験で19日までに特定、結果が米科学誌電子版に掲載された。

 大内教授らのグループは、心臓の血管を縛って心筋梗塞の症状を起こしたマウスにCTRP9を注射。24時間後の変化を調べたところ、注射したマウスは心筋梗塞によって起こる心臓の細胞の壊死(えし)が、注射しなかったマウスに比べて3割程度少なかった。

 また、CTRP9の血中濃度を持続的に高くしたマウスの心臓の血管を縛って心筋梗塞の症状を起こすと、何もしなかったマウスに比べて細胞の壊死が7割程度しか起きず、CTRP9が壊死の抑制に効果があることがわかったという。

 肥満は心筋梗塞など心臓病の原因の一つとされているが、グループの調査で肥満マウスの血中CTRP9の量が健康なマウスの約半分しかないことも判明。グループはCTRP9の減少が心筋梗塞を引き起こしやすいとみている。

 心筋梗塞を含む心臓病は国内の死亡原因で2位となっており、大内教授は「肥満状態を解消することが大事だが、心筋梗塞を発症した際に、CTRP9を使った薬剤や治療法の開発につながるのではないか」と期待している。

※米科学誌は「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」

2012年5月21日 提供:共同通信社