感染症:マダニに噛まれたら?予防対策は?
 

マダニ、刺されたら受診を くらしナビ・ライフスタイル

 ダニの本格的な活動期がやってきた。今年はマダニに刺されたとみられる成人男女がウイルスに感染して死亡した例が相次いで発表されている。身近な生き物だけに、不安な人も多いのでは。専門家に対策を聞いた。

 ●死に至る場合も

 ダニは大きく分けて2タイプある。屋外に生息し、動物や人に寄生して大量の血を吸うマダニ類と、家の中にいてアレルギーの原因になるコダニ類だ。この二つ、対処の仕方は全く違う。

 「マダニは皮膚の軟らかい部分を探して寄生吸着し、1週間ほど血を吸い続ける。その間に唾液を介して病原体が入れば、病気に感染して死に至ることもある」。福井大医学部の高田伸弘シニアフェローはこう語る。

 ダニが媒介する病原体は多く、これまで国内で問題になったのは、日本紅斑熱▽ツツガムシ病▽ライム病――の三つ。どれも刺されてから10〜14日後に高熱や全身の倦怠(けんたい)感などを引き起こし、治療には抗生物質が使われる。

 今年新たに確認された重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスも、マダニが媒介したとみられる。高熱に加え、嘔吐(おうと)や下痢の症状もあるという。抗生物質が効かず、現時点では輸血などの対症療法しかない。

 最大の予防法はもちろん、マダニの付着を避けることだ。だが、吸血前のマダニは幼虫は1ミリ、成虫でも3〜4ミリと小さく、見つけるのは難しい。「痛みはないし、腫れないので、刺されたとは気付かない」と高田さん。気付いた時には体長が1センチほどに膨らんでいることもある。

 だが、慌ててダニを取り除こうとすると、病原体を体内に押し込んだり、マダニの頭が皮膚の中に残ったりして逆効果。すぐに皮膚科を受診しよう。

 「マダニは屋外ならどこにでもいる。河川敷や田畑の縁など、ちょっとした草やぶも要注意」(高田さん)。犬の散歩などでも、ナイロン製の雨具のズボンやゴム長靴をはく方が安全だ。ダニの付着が分かりやすい明るい色が良い。帰宅後はすぐに入浴しよう。

 ●こまめに掃除機

 一方のコダニ類は、どの家庭にも住みついている。チリダニ、コナダニ、ツメダニなどがあり、東京都環境保健衛生課の古賀才理(さいり)・室内環境保健担当係長によると、体長は0・3〜0・6ミリで、肉眼ではまず見えない。温度25〜30度前後で湿度60%以上の環境を好む。人間のフケやアカ、食べこぼしを餌にするため、畳や布団、カーペットなどに生息する。

 コダニの害は、アレルギー性のぜんそくや皮膚炎と、刺されることによる不快症状の二つ。特にアレルギー症状は気をつけたい。小児気管支ぜんそくの患者の6〜8割は、チリダニにアレルギー反応を示すという。家族にアレルギーの人がいるなら、ダニを減らす工夫が必要だ。

 まず、掃除機をこまめにかける。毎日かけるのが理想だ。1平方メートルあたり20秒以上、畳は1畳あたり30秒以上かけて、ゆっくり掃除機を動かす。水拭きすればフンや死骸も取り除ける。

 寝具のお手入れも大切だ。カバーやシーツを水洗いして、天気の良い日に布団本体を干して湿気を取り除く。ダニは50度以上、10分以上で死滅するため、布団を黒いビニールで覆うと効果的だ。梅雨の時期は布団乾燥機でも良い。

 布団を干してたたいた後は、表面に付いたダニを掃除機で吸い取る。専用の掃除機のヘッドが市販されている。

 ●粉の保存に注意

 コナダニは小麦粉などを餌にして増殖するため、粉の中にいるのを知らずに食べ、アレルギー症状を起こすことがあるので注意。開封した粉は冷蔵庫で保存しよう。

 ただ、ダニに血を吸われても、病気が感染するとは限らないし、感染しても重症化するケースはまれだ。古賀さんは「ダニは有機物を分解してくれる、生活に欠かせない生きもの。アレルギー体質でなければ、あまり神経質になる必要はありません」とも話している。【鈴木敦子】

2013年5月28日 提供:毎日新聞社