肥満によって増えた腸内細菌が、肝臓がんを発症しやすくすることを、がん研究会がん研究所(東京都江東区)などの研究チームがマウスの実験で確認し、26日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表する。人間も同じ仕組みで肝がんを発症するケースが考えられ、研究チームは「腸内細菌の増殖を抑制すれば、肝がんの発症予防につながる可能性がある」と話す。
肥満の人に肝がんの発症が多いことは知られている。研究チームは、太らせたマウスの便を調べたところ、特定の腸内細菌が通常の3000倍以上も増えていた。抗生物質で腸内細菌を殺すと、肝がん発症率が下がった。
腸内細菌を殺した場合、修復できないDNA(デオキシリボ核酸)の損傷が起きた「肝星細胞」が減っていた。この肝星細胞の働きを調べた結果、種々のたんぱく質「サイトカイン」を分泌していることが確認された。このうち炎症を起こすサイトカインを作らないように遺伝子を改変したマウスでは、肝がんの発症率が下がった。【河内敏康】
2013年6月27日 提供:毎日新聞社