天然の国産スギの家と、合板など新建材の家とでは住み心地に差があるのかを比較実験している九州大の研究グループが、天然材の家では疲れた脳が回復しやすく、体も活動的な状態になることを突き止めた。九州大での日本木材学会九州支部大会で3日発表する。
研究グループの清水邦義(しみず・くによし)助教(農学研究院)は「スギの香りが影響したのでは」と推測する。
研究グループは、大分県日田市特産「津江杉」の家と、広さも見た目も同じ新建材の家を1棟ずつ大学構内に建設。2月から、実験内容を知らない学生10人が1人ずつそれぞれの家で作業したり一晩寝たりするのを、脳科学、生理学、心理学の観点から調べている。
脳科学実験では、パソコンで30分間作業する前後に脳波を測定。新建材の家では作業後、眠いときに多いデルタ波が増加、精神活動が盛んなときに多いガンマ波は減少し、作業で脳が疲れたことを示した。天然材では脳波が作業前後でほとんど変わらず、作業中の脳の疲労が急速に回復したことを示している。
生理学実験では唾液中の成分を計測。天然材では新建材と比べ、交感神経活動が活発なときに増えるアミラーゼが多かった。体が活動的な状態にあったことを意味する。
心理学実験では、緊張や不安の度合いを調べる心理学テストを実施。2棟の間で差はなく、どちらで過ごしても不快感を持つ人はいなかった。
清水助教は「被験者の脳と体は天然材の方が良い傾向を示した」と説明。「天然材の良さが分かれば国内林業の保護にもつながる」と期待する。実験は現在も継続中で、季節ごとの住み心地の違いも分析する予定だ。