働き盛りの男性に多いのが足や手の指に激痛が走る「痛風」。血液中に尿酸がたまることで起きるが、発作がなくても尿酸値が高い痛風予備軍は成人男性の5人に1人にも上るという。原因となるのが食べ過ぎ飲み過ぎをはじめとする生活の乱れ。あなたも痛風チェックをしてみよう。

食べ過ぎず、軽い運動を
「朝は一杯の水」習慣に


痛風の怖さの第一は、尿酸の結晶が関節にたまることで起こる激痛の発作だ。大抵の人は動けなくなってしまう。通常痛みは一週間程度続き、忘れたころにまた表れる。高い尿酸値を放置すると腎障害のおそれがある。さらに、合併症状として高血圧となる人が約5割、高脂血症の人は6割にもなる。心筋こうそくや脳血管障害なども起こしやすい体質といえる。

「痛風はホルモンの関係から99%が男性の病気。最近は若年化の傾向も指摘されている。最も多いのは30代後半だが、20代も高い数値が出ている」と話すのは東京女子医大・膠原(こうげん)病リウマチ痛風センターの山中寿・助教授だ。山中助教授が作ったチェックリストを基に、自分の“痛風度”を検証して欲しい。

「痛風ほど症状の危険度を数値で判断できる病気はない。大前提は自分の尿酸値を知ることから。血液1デシリットルあたりに尿酸が7ミリグラムというのが境界線。この数値の超え幅大きいほど、長い期間数値が高いほど、痛風になりやすい」と山中さん。

合計得点が6点以上の注意・危険領域に入る人には守るべき5原則がある。

1.食事の総量規制を
痛風の人には肥満が多い。第一に食事量に気をつけたい。かつては「この食材はだめ」という細かな注意が必要との超えもあったが、最も大事なのは食べる合計量だ。

1日の目標数値は「標準体重×35」キロカロリー。身長172センチの人なら標準体重は65キロ。1日の摂取カロリーは2275キロカロリー程度にとどめておこう。「よくかんでゆっくり食べること。間食はしない、お酒を飲んだ後のラーメンはやめる、昼食はそばにするなど工夫して」

2.酒は毎日1単位まで
「ビールでなければ大丈夫というのは単なる飲べえの思い込み」と山中さん。酒ならば何でも、アルコールを分解する段階で尿酸はできる。ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、ウイスキーならダブルを1杯と、1単位でとどめるのが賢明だ。

3.水分をたっぷりとる
痛風患者や予備軍には太った人、汗っかきの人が多い。体が脱水気味になると尿酸値は上がる。また痛風の人の5人に1人は尿路結石であるという。1日に2リットルの水かお茶が目安になる。目覚めに1杯の水から習慣づけたい。

4.軽い運動をのんびり
息が上がるような強い運動は尿酸値を上げるので逆効果。うっすら汗がにじむ程度のウォーキングや軽めの水泳などがいい。心拍数の目安として20−30代なら1分間に110から120、年齢が高い層は100から110程度の運動を取り入れる。

5.ストレスを上手に発散

「ストレスを大食い、酒、スポーツジムでの強い運動などでメリハリよく発散する人は、できるサラリーマン。でもこれは今まで挙げた原則の逆をいく行為。だから有能な人に痛風が多い。精神的ストレスをわざわざ肉体ストレスに転嫁している」と山中さんは指摘する。体をいじめず、ゆったりのんびり。痛風予防や改善のためには、一念発起で何かを始めるより、のんびりマイペースのストレス解消が合言葉になる。

痛風になった人も「薬を飲めばすぐに治る」と言って、この5原則を忘れがちにになる。
尿酸を減らすには薬とも5年から10年の付き合いになる。痛みがないときも、この5原則をしっかり守ることが大切だという。

痛風チェック
1. 血液1デシリットルあたりの
尿酸値(ミリグラム)は
  7.0以下
7.1〜8.0
8.1〜9.0
9.1〜10.0
10.1以上

0点
1点
4点
7点
10点

6. 高血圧が
  ない
ある

0点
1点

7. 中性脂肪が高いと
指摘されて
  いない
いる

0点
1点

2. 痛風発作を
起こしたことが
  ない
1回ある
2回以上ある

0点
5点
8点

8. アルコール飲料は
  全く飲めない
あまり飲まない
よく飲む

2点
0点
2点

3. 4等身(いとこ 、大おじ、大おばら)以内の血縁に痛風患者がいない
  いない
いる

0点
3点

9. ビールは
  あまり飲まない
大好き

0点
1点

4. 尿路結石と
診断されたことが
  ない
ある

0点
2点

10. 過食傾向が
  ない
ある

0点
1点

5. 20歳の時より体重が
10キロ増えて
  いない
いる

0点
2点

12. 精神的ストレスが
  少ない
多い

0点
1点

合計点が5点以下
 
6〜10点
日常生活で少し注意が必要です
11〜15点 治療の必要な可能性が高く、
専門医の受診を勧めます
16点以上 絶対に治療が必要です
(注)山中寿・東京女子医大助教授による


(2002.11.16 日本経済新聞)