食道がんリスク高い「飲酒+喫煙」  がんの時代を暮らす

 食道がんで亡くなる芸能人が続いています。今年も、タレントのやしきたかじんさん(64)や女優の淡路恵子さん(80)がこのがんで命を落としました。僕の母校、暁星学園(東京都千代田区)の先輩である中村勘三郎さんも、2012年末に食道がんで悲しい最期を遂げています。

 芸能人に食道がんが多い理由は、「飲酒+喫煙」の生活習慣にあるといえます。たかじんさんは、私も治療法などについて何度も相談を受けたことがありますが、療養中も大好きなワインをたしなんでいました。淡路さんも、遺族がブランデーとたばこをひつぎに入れたほど、酒とたばこを愛していたそうです。勘三郎さんも酒好きでした。30年近くがん治療に携わってきましたが、食道がんの患者さんで、酒にもたばこにも縁のない例はほとんどなかったと思います。

 酒とたばこは、食道がんを増やす「リスク因子」ですが、量が増えるとともに危険性が高まります。たばこの場合、喫煙指数(1日の箱数×喫煙年数)が20未満では、食道がんになる確率は吸わない人に比べて2・1倍ですが、指数が40以上になると4・8倍に跳ね上がります。

 飲酒は、日本酒に換算して1〜2合では2・6倍、2合以上では4・6倍になります。芸能人に多い「飲酒+喫煙」は特に危険で、リスクが10倍に達するという研究もあります。さらに、ヘビースモーカーが顔を赤くしながら3合以上お酒を飲むと、食道がんのリスクは30倍以上ともいわれます。芸能人には、こんな人が多いのかもしれません。

 また、勘三郎さんの場合、診断された時点でリンパ節に転移がありました。食道がんは胃や腸と違い、臓器の外側を覆う膜がないため、早い時点で転移が起きるのが特徴なのです。最近は手術と並び、放射線と抗がん剤を併用する「化学放射線治療」も広がってきましたが、放射線だけの治療に比べ副作用が強く出る傾向があります。

 食道がんのリスクを減らし、予防するため、野菜や果物を食べる方法もありますが、何といっても、「禁煙+節酒」が最良の予防法といえます。(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)

2014年2月13日 提供:毎日新聞社