乳酸菌シロタ株で風邪減

乳酸菌シロタ株で風邪減
英ラフバラ大、アスリートで検証

 アスリートにとって重要な健康管理に際し、乳酸菌「ラクトバチルス カゼイ シロタ株」(乳酸菌シロタ株)の継続摂取が風邪の発症リスクを低減化させるという知見がイギリスのラフバラ大学の研究グループによりまとまった。スポーツするヒトは、健康だと思われがちだが、習慣のないヒトに比べ、1年間に風邪をひく頻度が約2倍高い。これは、ストレスを受けやすいために、免疫力が低下し、コンディションを崩すと考えられている。英国で行われたアスリートに対する臨床試験では、乳酸菌シロタ株を配合した飲料(ヤクルト)を飲用してもらったところ、風邪ウイルスから守る唾液中のIgA抗体が一定レベルを維持し、非飲用者に比べ、風邪の発症が半分に減少し、同乳酸菌の効果が確認された。

 ラフバラ大学の研究グループは、同大学学内の自転車部、トライアスロン部、陸上部(中長距離走)、水泳部などに所属するアスリート84人に協力してもらい、欧州で市販されているヤクルトの乳製品乳酸菌飲料を飲用サンプルとして使用した。同飲料には、1本当たり乳酸菌シロタ株が65億個含まれている。被験者を、乳酸菌シロタ株配合飲料飲用群と、疑似飲料(プラセボ)飲用群とに分け、比較試験を実施。1日2本(乳酸菌シロタ株として130億個)、16週間にわたり飲用してもらった。同大は英国内で、スポーツエリート大学として知られている。

 試験開始前、8週目、16週目に血液と唾液を採取して、免疫パラメーターなどに対する影響を調査。84人のうち、競技大会などのため16週間完遂したのは58人(乳酸菌シロタ株配合飲料飲用群32人と、プラセボ飲用群26人)。研究グループは、この58人に対し、詳細な分析を行ったところ、1回以上風邪をひいた被験者の割合は、乳酸菌シロタ株配合飲料飲用群66%に対し、プラセボ飲用群90%と、明らかに発症リスクが低下することが検証された。

 また測定した唾液中のIgA抗体の濃度は、プラセボ飲用群で低下したのに比べ、乳酸菌シロタ株配合飲料飲用群では一定レベルを維持し、両群間に有意な差が認められた。今回の試験では、体内で有用に働く乳酸菌シロタ株のメカニズムの一部が明らかになりつつあることが示された。一方、血液中の免疫パラメーターについては変化がみられなかった。

 アスリートは、アミノ酸、ビタミンなどで体調管理を行うことが一般的だが、プロバイオティクスである乳酸菌シロタ株の整腸機能を併せて利用することにより、コンディションづくりに役立つ可能性がある。

 この研究とは別件だが、ヤクルト本社中央研究所による研究でも1日400億個の乳酸菌シロタ株配合飲料を3週間飲用すると、自然免疫の代表的な免疫細胞ナチュラルキラー(NK)細胞の活性が上昇することがわかっている。

 2012年に日本が策定した「スポーツ基本計画」によると、成人の週1回以上のスポーツ実施率を65%程度、週2回以上を30%程度とすることを目指している。日本のスポーツ人口はさらに増加すると予測され、競技で最大限のパフォーマンスを発揮しなくてはならない、アスリートの健康管理にも乳酸菌シロタ株が役立つという新たな側面が明らかとなった。

2014年2月20日 提供:化学工業日報