血管老化で糖尿病悪化を誘発
新潟大南野徹教授らがメカニズム解明、米誌に発表
糖尿病やメタボリック症候群による血管の老化が筋肉でのエネルギー消費を妨げ、余ったカロリーが内臓脂肪として蓄積されることでさらに糖尿病が悪化するメカニズムを、新潟大大学院医歯学総合研究科循環器内科の南野徹教授(49)らの研究グループが突き止めた。22日付の米科学誌「セル・リポーツ」電子版で発表した。
糖尿病で動脈硬化など血管の老化が起こることは知られているが、血管老化が糖尿病にどのような影響を及ぼすかは分かっていなかった。血管老化から症状が一層進行するという悪循環を断ち切ることで、新たな治療法開発に役立つ可能性がある。
南野教授らは科学技術振興機構の事業として、2011年から研究を開始した。
筋肉では通常、血流から糖を取り込み、細胞内の小器官であるミトコンドリアでエネルギーを作り出している。南野教授らは血管老化を引き起こすタンパク質「p53」に着目した。
高カロリー食を与えたマウスで検証すると、p53が活性化して筋肉へ糖を取り込む機能が抑制されるほか、ミトコンドリアの合成を促す一酸化窒素が作られにくくなった。このためエネルギーとして消費されなかった余剰カロリーが内臓脂肪となって蓄積し、症状が悪化することが分かった。
現在の糖尿病治療は血糖を下げることに重きが置かれているが、南野教授は「血管の老化を抑えることが糖尿病の進行を抑える鍵となる」と指摘。「病気を悪化させる仕組みそのものに働きかけることで、根本的な治療につなげたい」と述べた。
生活習慣病を専門とする熊本大大学院の尾池雄一教授は「血管の老化が糖尿病を悪化させるのは『そうであろう』と思われていたもののはっきりしておらず、科学的に解明したのは素晴らしい」と評価した。
引用: 新潟日報 2014年5月23日(金)