糖尿病で腸内細菌が血中移行


糖尿病で腸内細菌が血中移行
腸内フローラの改善による炎症抑制への糸口

 ヤクルト本社は、順天堂大学大学院医学研究科の佐藤淳子医師、同大学院プロバイオティクス研究講座の山城雄一郎特任教授らと共同で、日本人の2型糖尿病患者の場合、腸内菌叢(フローラ)のバランスが乱れ、腸内細菌が血流中に移行しやすいことを解明した。2型糖尿病ではこれにともなう炎症が、体内のさまざまな部位に悪影響を及ぼす可能性を持っている。今回の新知見をもとに、腸内フローラと炎症との関係を明らかにすることを追求していく。今回の研究成果は、腸内フローラの改善による炎症抑制をにらんだ研究への糸口が開かれることになる。

 ヤクルト本社中央研究所と順天堂大の共同研究グループは、日本人の2型糖尿病患者50人を対象に、罹患していない被験者50人と、腸内フローラの比較解析研究を実施。ヤクルト本社が開発した、腸内フローラ自動解析システム「YIF−SCAN」を活用することで解析が可能になった。

 2型糖尿病患者と罹患していない被験者の糞便から腸内フローラを解析したところ、腸内細菌数の総数に大きな差はなかったが、フローラを構成する細菌の種類の割合が異なることを突き止めた。また血液中の腸内細菌の解析からは、2型糖尿病患者の28%に当たる14人に腸内細菌が検出された。これに対し、罹患していない被験者では、検出率が4%(2人)と低かった。この結果から2型糖尿病患者の場合、血液中に腸内細菌が高い割合で移行することが明らかになったとしている。

 今回の研究についてヤクルト本社の石川文保中央研究所所長は「国民病ともいえる2型糖尿病の罹患者の削減は、社会が取り組む課題の一つ。今回の研究から得られた成果は、2型糖尿病にともなう炎症機構を解明する上で重要となる。腸内環境の改善を介した新たな2型糖尿病の治療法の開発につながることを期待している」と述べている。

引用:化学工業日報 2014年6月12日(木)

2014年6月20日更新