年をとるにつれて、おなかのまわりの脂肪が気になる。食欲は少なくならないのに、生命維持に必要なエネルギーが少なくなるから脂肪がつく。中高年では、脂肪細胞の数が増えるよりも、脂肪細胞そのものがふくれて体重が増加することが分かっている。

まず取り組まなければならないのは、脂肪細胞に蓄えられる脂肪の量 を食事などで減らすことだ。そして、脂肪を燃やす運動も並行して実施する。脂肪を分解してエネルギー源とする、赤筋(遅筋繊維)を使う運動がよい。赤筋は背骨のまわりとか手や足の深部にあるので全身を動かすと効果 的だ。

水中運動が脂肪分解にに適しているのは、運動負荷が非常に低い段階からでき、運動による筋の損傷が少なくて済むためなどだ。脂肪分解には大量 の酸素が必要なので、息苦しさを伴わない程度のゆっくりとした運動負荷がよい。

まず、ゆっくり水の中に入り、水温と水圧に慣れると同時に、その場で手や足のストレッチングを行う=写 真参照。次に、息苦しくならないスピードを保ちながら30分以上の水中ウォーキングを実施する。泳げる人はまさに全身運動になるので泳ぐのもよい。息を切らすような運動は、体に酸素が足りない状態になるので、くれぐれも他人のペースに乗らないことが大切である。

私の研究では、中高年を対象に水中運動を週2回のペースで40−60分間実施。1分当たり120拍程度の心拍数を維持しながら450キロカロリーの運動エネルギーを消費させた。 3ヶ月後には1.5キロの脂肪を燃焼させることができた。

太った人やあまり運動していない人が急に激しい運動をすると、脂肪が一度に大量 に分解されてしまう。処理できない脂肪酸が大量に血液中に出てしまうと血液の流れが悪くなり、心臓疾患や突然死を招く危険性がある。ぜひ、この夏はマイペースで水中運動を楽しんでいただきたい。

(国士館大学講師・医学博士 須藤 明治) (2000.7.29日本経済新聞)