朝の一杯活力生む
腸を掃除/ボケ防ぐ/二日酔いにも

温かい湯気とともにふわっと立ち上がるみそ汁の香り。地味な存在ではあるが、具だくさんにすれば栄養価が高まるのはもちろん、みそにはさまざまな効用がある。みそ汁の力を見直そう。
みその主原料は大豆。たんぱく質やイソフラボン、レシチン、食物繊維など栄養豊富な「畑の肉」だ。大豆のままだと煮たり、いったりしても消化吸収されにくいが、米や麦などの麹(こうじ)と塩を加え発酵、熟成させると、アミノ酸やペプチドに分解され、吸収しやすくなる。

動脈硬化など抑制

たんぱく質以外にも、動脈硬化や肝障害を防止する働きがあるサポニンや、糖尿病を抑制するトリプシインヒビターなどの成分を含む。

みその褐色色素のメラノイジンには別の効用がある。魚の干物などにあるトリメチルアミンと、野菜に含まれる亜硝酸が胃の中で反応すると発がん性物質が生じるとされるが、女子栄養大学の五明紀春教授は「その生成を抑制する効果が期待されている」と指摘する。

このほか血管の弾力性保持、肩こりの解消、ボケ防止などの効用がある成分も。汁にすれば、みその有効成分はもちろん、具材から溶け出た栄養分も取り込める。「みそ汁は特定の成分だけ突出して入っている機能性飲料より、さまざまな栄養素を総合的に摂取できる」と中央味噌研究所の藤波博子理事は話す。

朝の毒消し、といわれるように、「特に朝食に適している」(同研究所の毛利光之理事)。食物繊維が腸の掃除をするほか、寝汗などで失われた水分と塩分を補える。二日酔いに良いとされるのは、肝臓に入ったアルコールが脂肪となって蓄積するのを防いだり、活性酸素を除去したりする働きがあるからだ。

米・麦・豆の3種類
みそは加える麹によって大きく3つに分かれる。米、麦、豆の3つだ。大豆に対する麹の割合などによっても味や香りは違う。生産量の8割を占めるのは米みそで、代表的なのは仙台みそ、信州みそ、関西白みそなど。九州を中心とした麦みそは独特の甘みがあり、東海地方に広がる豆みそは濃厚なうまみがある。

ホテルの西洋料理のシェフにはみそを隠し味にする場合も多く、チーズやバターにも意外に合う。

合わせみそで楽しむのも手。中央味噌研究所の毛利氏は「産地や素材の違うものを合わせるとうまみや味を補い合える」という。加賀みそと秋田みそ、九州麦みそと仙台みそなどだ。だしは煮干し、削り鰹、昆布などお好みで。だしが面倒なら即席だしを使えばいい。コツは沸騰したら振り入れて火を止めること。

気になるのは塩分。ナトリウムの過剰摂取は高血圧などの一因になるからだ。みそに使うのは、熟成過程で発酵微生物の増殖や雑菌を抑えるため。仕込む時に使う塩の濃度は通常12%前後だが、実際に食べるみそ汁は1%程度。市販のスープやインスタント食品に比べれば少なく、毎日とっても問題はない。

それでも気になる向きには、ナトリウムを体外に排せつする働きがあるカリウムの摂取がお薦め。多くの緑黄色野菜や海藻類のワカメなどを入れればいい。また、「大豆のペプチドは血圧の上昇を抑える働きがあり、塩分の弊害を打ち消す効果もある」(女子栄養大の五明教授)。まずは、朝1杯のみそ汁から習慣づけたらどうだろう。

秋と冬のみそ汁
( )内の吸い口は後で添える
白菜とキムチときのこのみそ汁
・白菜キムチ、エノキダケ(万能ネギ、アサツキなど)
・だしを煮立ててみそを溶き、ざく切りにした白菜キムチとエノキダケを入れる

ジャガイモとカリフラワーのみそ汁
・ジャガイモ、カリフラワー、ホウレン草(バター)
・だしでジャガイモとカリフラワーを軟らかく煮て、ホウレン草を加えてみそを溶く

山芋の落とし汁
・山芋(焼きのり、ユズ、アサツキなど)
・だしを煮立ててみそを溶き、すり下ろした山芋を1人分ずつ、はしでちぎって入れる

白菜とベーコンのみそ汁
・白菜、薄切りベーコン(黒コショウ)
・白菜は細切り、ベーコンは粗みじん切りに。だしで煮て、みそを溶く

洋風みそ汁
カマンベールチーズのみそスープ
・カマンベールチーズ、ジャガイモ、ネギ、だしまたは鶏ササミスープ、淡色の米みそ(三つ葉、黒コショウ)
・一口大にカットしたジャガイモは水にさらす。3センチに切り、縦2等分に。だしまたはスープでジャガイモ、ネギを煮てみそを溶く。』チーズをちぎって入れて、沸騰直前で火を止める。

ベーコンとジャガイモのみそスープ

・ベーコン、ジャガイモ、鶏ささみスープ、赤色の米みそ(クレソン)
・ベーコンは1センチ幅、ジャガイモは1センチ幅の半月切り。スープでベーコンとジャガイモを煮てみそを溶き、沸騰直前で火を止め、熱いうちにバターを溶かす。
(みそ健康づくり委員会より)
2004.10.9 日本経済新聞