ウォーキングがはやっている。特に40歳を過ぎると大人気で「健康のために実行する良いこと」の代表格になっていると言って良い=グラフ参照。何しろ中高年者は「コレステロール」「血圧」「体重」などの値が高くなりがちで、ふたこと目には「運動しなさい」「歩くのが良い」と言われるからだ。

ウオーキングはだれにでも始めやすい。考えてみると歩くという動作はサルからヒトに進化して以来、みんなが実行してきたことであるし、よほどの速足でなければ特に息苦しさや筋肉痛も経験しないで済むという気楽な運動である。季節もちょうど良いし、ともかく戸外に出て散歩することから始めてみよう。

実際に歩いてみると気分がすっきりして食欲も感じられるし、便秘解消や熟睡という効果もある。以上は1回の経験でも得られるので「短期効果」である。これにつられて繰り返すうちに、血糖値やコレステロールが下がり、やがて血圧や体重もコントロールできるようになるという「長期効果」を期待できる。

ウオーキングのような全身運動を数分間続けると血液循環が活発になり、それに伴いエネルギー代謝が盛んになる。激しい運動をすると汗がどっと出るほどに勢いよく代謝が進むが、歩く場合はいわば「ぬるま湯」効果である。ぬるま湯に長くつかれば体が良く暖まるのと同じである。

速足なら効果もはっきり期待できるが、それだけ苦痛を感じたりする。ゆっくりウオーキングでも、一定時間持続すればそれだけ体温が上がり、代謝が進む。
代謝とは食事で摂取した当分や脂肪が燃えることである。5分より10分と持続時間が長くなり、体温が上がるほど脂肪燃焼の割合が増え、効果が期待できる。

やはり「ウサギよりカメ」で、10分、20分のウオーキングに今日から挑戦しよう。
(九州保健福祉大教授 波多野義郎)
2000.5.5 日本経済新聞