若いうちに対策を
服装は「頭寒足熱」
温性食物を摂取
足湯で血行促す

多くの女性が苦しんでいる冷え性。東洋医学では「冷え性は万病の元」とされ、その克服が肩こりや腰痛などの症状も和らげるという。衣食住の生活改善で予防する「現代版養生訓」を専門家に聞いた。

営業ウーマンのAさん(34)は秋口から、天井がぐるぐる回るようなめまいに頻繁に襲われるようになった。病院で脳波の検査をしたが、特に異常は見つからなかった。

「Aさんのめまいは冷えが原因だった。冷え性は必ずしも体のどこかの冷えとして現れるとは限らない。ほてり、むくみ、めまいなどを引き起こすこともある」と説明するのは、東京都墨田区に本部を置く「全国冷え性研究所」山口勝利所長。全国80カ所に支部を持ち、冷えの実態を解明し、効果的な治療法の発見に努めている。

女性の7割が悩む

Aさんの場合、夏の炎天下とクーラーの効いた屋内を行き来しているうちに、体温調節をつかさどる自律神経の働きが鈍ってしまった。つまり不調の原因は夏につくられ、それが数カ月後に症状として現れたのである。

女性千人を対象にネット調査をしたエスエス製薬の「冷え性白書」によると、7割が冷えに悩んでいる実態が明らかになった。さらに主婦よりも20−30代の働く女性の方が深刻だった。「個人的体質だけでなく、生活のリズムの崩れや社会的ストレスも影響していることが垣間見える」(同社広報部)という。

西洋医学では、冷えは「冷え性」であって病気ではないとの認識で、長らく治療の対象外だった。だが、東洋医学では早くから疾病とみなされ、「冷え性を克服すれば肩こり、腰痛、不定愁訴などの症状は和らぐ」(山口所長)と考えられていた。従って東洋医学では、冷えが進んで体調不良となる理由を、血(血流)、水(汗・尿・リンパ液などの体液)、気(生命エネルギー)のバランスの乱れととらえている。

目黒クリニック(東京・品川)の南雲久美子院長はこう解説する。「冷え性は、体内に冷えというダメージを蓄積した状態であり、冷えの程度×年数で、その重さを表せる。20代の手足の冷えから始まり、30代、40代へと年齢が上がるにつれ、症状は重くなる。だから若いうちから冷え予防に取り組むことが大切。それが更年期に出るさまざまな体調不良を軽くすることにもつながる」

予防法は@外からの冷えを防ぐA内からの冷えを防ぐB冷えたら温める――の3つ。そこで南雲院長に手軽な冷えたい策を挙げてもらった。

@は服装の問題。基本は「頭寒足熱」だ。大きな血管がある下半身を温かくすると、上半身もあまり寒く感じなくなる。見た目を気にして、きつめの洋服を選んだりハイヒールを履いたりすると、血管が圧迫され冷えを悪化させる恐れがある。無理せず温かい下着で下半身を守りたい。

Aは食に関すること。食物には、体を冷やすものと温めるものがある。原産地が寒冷地や根菜類、薬味、香辛料は温性で、夏が旬のものや葉もの野菜、トロピカルフルーツなどは冷性。当然温性の食品を多くとるよう心がける。

ただ、冷性の食物でも加熱、天日干し、発酵などの処理をすれば、冷え性にとって効果的なものに変身する。例えば豆腐は湯豆腐にして、たっぷりの薬味で食べればいいし、野菜はサラダでなく、いためたり煮炊きすればよい。

朝食抜きは禁物

ダイエットのため朝食を抜くのも間違い。朝起きたばかりの時は体温が低く、代謝機能も落ちている。温かいスープやみそ汁を飲むだけでも大切なエネルギー源になる。

Bに関しては「足湯」がお薦め。足は「第2の心臓」と呼ばれ、血液を体内に戻す役目をする。42度くらいの熱めのお湯にくるぶしまでつけていると、血管が拡張し熱が体の隅々まで行き渡る。時間がないときなどでも手軽にできる。

防寒意識の高まるこれからの季節、冷え性撃退法を試してみてはどうだろう。

簡単にできる冷え性予防マッサージ

手のひら体操
  おにぎりをにぎる要領で、両手を軽く組み合わせる。右手で左の手首を外側へそらすように押す。逆も同様に。左右交互に3秒ずつ5回繰り返す。
足指運動
  床にタオルを敷き、両足をのせる。グーをつくるようにして、足の指でタオルを強くつかむ。次にパーをつくり指を大きく開く。このジャンケン運動を20回行う
下半身ストレッチ
  背筋を伸ばしてイスに深く腰かける。片足を曲げて、お尻の下にする。片足だけで正座しているような感じで。デスクワークで疲れたときに両足5分ずつ行う。


東洋医学的な冷えの分類と進行


20代 30台 40台・50台  
血の異常
水の異常
気の異常
血と水と気のすべての異常
血行が悪くなり、手先、足先が冷えて、生理痛、肩こり、肌荒れなどの症状をもたらす 水分代謝が乱れ、大腿部、下腹部などが冷える反面、顔や手足がほてる。頭痛やめまいが起きる 自律神経のバランスが崩れ、冷え症状が全身に広がる。どうき、息切れも出てくる
2004.11.6 日本経済新聞