長寿県であった沖縄にも、近年陰りが出てきた。男性の平均寿命が、1985年までトップだったのが、2000年の調査では長寿ベストテンから滑り落ち、全国平均を下回った。女性の場合はまだトップの座を占めているが、寿命の延びはあまり良くない。しかし、意外な点に気付く。65歳以上の人がさらにどれくらい生きられるかをみる平均余命では、男性は18.45年で全国一である。さらに100歳以上の長寿者は10万人あたり39.5人と、これも全国一多い。

実は沖縄県の平均寿命を引き下げた原因は15−45歳の人の死亡率が全国平均を上回ったからなのだ。なかでも30代以上で糖尿病や肝臓病で死亡している人が多いという。この年代は戦後生まれの若い世代であり、米国の占領下で生活習慣が大きく変化している。

これを沖縄のある医師は「3C」という言葉で表している。1番目のCはコレステロール値の上がりやすい食品、つまりファストフードをよくとるようになったこと。第2のCはシガレット、つまりたばこを吸う人が増えたこと。3番目のCはカー。車に乗る機会が多く運動不足になったこと。

これに加えて生活習慣病を防ぐ野菜・豆腐をたくさん使うチャンプルーなどの郷土料理をとる人が減ってきたことが大きい。行事の時以外はあまり飲まなかった泡盛を、よく飲む人が増えてきたのもマイナスだ。

こんなことから肥満が増え、糖尿病や脂肪肝多くなった。野菜不足は日本全体にもいえること。沖縄の教訓を反面教師としたい。
(新宿医院院長 新居 裕久)
2004.11.6 日本経済新聞