花粉症やうつ症状
穏やかな効果期待
味や色・香りを楽しみながら

異例の大雪に見舞われたが、ようやく春めいてきた。ただ、この時期になると、スギ花粉で苦労したり、就職など環境の変化で憂うつな気分や不眠になったりと体調を崩す人も多い。そんな「春の憂い」にハーブティーはいかがだろう。薬を使いたくない人や、サプリメント(栄養補助食品)と違って味や香り、色を楽しみたいという人に人気だ。

企画会社役員の山川竜一郎さん(65)が初めてハーブティーを試したのは3年ほど前。高血圧だったが薬は副作用が強くて体に合わなかった。たまたま通り掛ったハーブの専門店で血圧を下げるのにいいというハーブを調合してもらい、飲み始めたところ「1カ月もたたないうちに血圧が下がった」。それ以来ハーブティーを愛飲している。

最近効果を実感したのは花粉症に効くハーブだ。ネトルやエルダーフラワーなどをブレンドしてもらったものをお茶にして毎朝飲み続けたら、鼻水とくしゃみで悩んでいたのが「昨年は非常に楽になり、花粉が多いと聞く今年もくしゃみは抑えられている」(山川さん)という。

ここで言うハーブは様々な草や木の葉や茎、花、根、実などを乾燥させた「ドライハーブ」のこと。これにお湯を注ぎ成分を抽出して飲むのがハーブティーだ。

ハーブとアロマテラピーの専門店「生活の木」(東京・渋谷)の佐々木薫さんによると、花粉症に効果があるとされるハーブは何種類か知られている。

ネトルヤペパーミント、ローズレッドは抗アレルギー作用がある。花粉症は花粉という異物が体内に入って抗体ができ、ヒスタミンなどの物質が放出されてくしゃみや鼻水につながるが、そうした動きを抑えるという。エルダーフラワーは鼻水などを緩和する抗炎症作用があり、アイブライトは目のかゆみに効き、エキナセアは花粉に過剰に反応しないよう免疫力を高める効果があるとされる。

ハーブの効能は、太古の昔から治療などに使われてきた野草木の経験則が蓄積された結果だ。近頃では科学的実験で効果が裏付けられた例もある。米国の研究者によるネトル抽出物を使った実験で、6割の人がアレルギー性鼻炎が改善。岡山大や日大の研究でもペパーミントやローズレッドの抽出物が花粉症を緩和することが明らかになった。

ただ、ハーブに詳しい金沢大医学部の鈴木信孝教授は「医学的に完全に効果があると証明された花粉症に効くハーブは見つかっていない」と語る。人への本格的な臨床実験もまだこれからで、あくまでも薬と違って穏やかな効果があるもの、と考えて飲むのがいいようだ。

花粉症だけではない。不眠症やうつに効くハーブも知られている。東京都内の会社に勤めるOL、小川朋子さん(仮名、31)は3年前、仕事のストレスや人間関係で悩み、不眠で苦しんでいた。友人から勧められたのがバレリアンとジャーマンカモミールをブレンドしたハーブティー。「即効性があり、飲んだ日はうまく睡眠がとれた」。以来、眠れない時はこれを飲む。「サプリメントと違って香りや色があり、お茶を入れる行為も楽しい」と話す。

ジャーマンカモミールは鎮静作用と体をあたためる作用があり、深い眠りに誘う。バレリアンは特に欧州で安眠効果があるとして昔から使われているハーブだ。
うつ症状にいいのはセントジョーンズワート。うつ病はセロトニンというホルモンが不足することが一因だが、このハーブはセロトニンの減少を防ぎ、ドイツでは薬として売られ、米国でもサプリとして人気だ。ただ、重症のうつ病には効かない。

それぞれのハーブは単品でお茶にしてもいいが、味に好き嫌いがある。例えばネトル。青のりの風味があり、飲みづらい。専門店「ボタニカルズ」(東京・千代田)の窪田利恵子さんは@レモングラスやハイビスカスなど飲みやすい味がついたハーブA効能があるハーブB甘さを加えるステビアのような味を調整するハーブ――の3つを組み合わせて飲むことを勧める。

専門店ではブレンド製品も売っているし、顧客の要望で店頭でブレンドするサービスもあるため、最初はそうしたハーブティーを試してから自分にあったものを探すといいようだ。

効果があるとされる症状とハーブティーの種類・効能

症 状
種 類
効 能
花粉症
ネルト 抗アレルギー
ペパーミント 抗アレルギー
ローズレッド 抗アレルギー
エルダーフラワー 鼻水などを緩和する抗炎症
アイブライト 目のかゆみを抑える
エキナセア 免疫力を高める
不眠症
ジャーマンカモミール 鎮静作用
バレリアン 安眠効果
うつ症状
セントジョーンズワート 抗うつ



2005.3.12 日本経済新聞