汗かき気分もスッキリ
蒸し暑い部屋で実践
万全な体調で水分補給しながら

室温が40度前後の蒸し暑い部屋の中でヨガをする「ホットヨガ」が人気だ。大量の汗をかくため、ダイエット法としての話題が先行しがちだが、新陳代謝を促す効果も注目される。実際にホットヨガのスタジオを訪ねてみた。

東京・渋谷にあるインドヨガカレッジを訪ねた。校長のブダデブ・チョードリー氏が1971年に創立以来、ホットヨガを教えている。スタジオに一歩足を踏み入れるとむっとした空気が体を包み込む。温度計を見ると、室温は40度、湿度は50%ほど。30畳ほどの部屋に暖房器具が4つ置かれている。

1レッスンは90分。2つの呼吸法を含めて約30のポーズで構成される。インストラクターの声に合わせ、呼吸法が始まった。始まって10分ほどで、腕や足から玉のような汗が噴き出してきた。教えているのは「ハタヨガ」という種類のヨガ。ハタとは「フィジカル」という意味で、ヨガの様々な流派の中では体を大きく動かすタイプのヨガだという。

インストラクターからは「目を閉じないで」「呼吸を止めないで。ここで吸って。はい、吐いて」と指示がとぶ。目をつぶると眠くなるうえ、余計なことを考えてしまい集中力が途切れるからだ。

それにしてもなぜ、部屋をここまで暑くするのか。チョードリー氏は「暖かいと体が動きやすい」と説明する。ヨガの本場、インド出身のチョードリー氏にとって日本は「寒い国」。真夏でも冷房が利いた場所が多く、筋肉や関節が硬くこわばりがちだ。

体が温まった状態なら柔軟性が高まり新陳代謝もより活発になり、便秘や不眠症、肩こり、生理不順に効果があるという。大量の汗をかくことで血液の循環もよくなり、肌もしっとりする。ダイエット効果もあり、90分のレッスン後に体重が2キロほど減る人もいるらしい。

東邦大医学部の有田秀穂教授(統合生理学)は、ヨガの効果を科学的に立証している。ヨガの後、気分が爽快に(そうかい)になるのは、元気を演出する脳内のセロトニン神経が「ヨガの際のリズム性の呼吸によって刺激されるからだ」と説明する。教授によると、ヨガの呼吸法を試した後は不安や緊張が和らぎ、目や背中にある筋肉にも刺激が加わり、背筋が伸びて目もパッチリする。

ホットヨガの場合、こうしたヨガの効能に加えて、「汗もたくさん流して老廃物を体外に出し、新陳代謝を促し、体重減も期待できる」(有田教授)。

ホットヨガは数年前から米西海岸を中心に注目されるようになった。日本でもここ数年近くの間に次々とスタジオができている。

LAVA(東京・渋谷)は都内5ヵ所でスタジオを運営。受講者は働く女性だ。横浜市、さいたま市、千葉県松戸市などにもスタジオを開設する。ReU(東京・新宿)は都内と横浜で4スタジオを開設。渋谷や千葉市などにも設ける計画がある。現在のところ首都圏や大阪、名古屋など大都市圏に集中している。

スタジオに通えない人が、ホットヨガを自分で試すことはできるのか。

インドヨガカレッジのチョードリー氏は「基本的には、専門家の指導を受けてほしい」と強調する。ヨガの動きの中には、素人が見よう見まねで行うと首や腰を痛めかねないものもあるからだ。そのうえで、初心者でも試しやすいポーズを4つ、教えてもらった。

実際にホットヨガをする際は、大量の汗をかくので、水分補給は絶対に忘れないようにしたい。インドヨガカレッジではレッスンの合間に休憩が入り、水分を補給。LAVAやReUでは1リットル以上の水を飲みながらレッスンを受ける。1回のレッスンで、ほとんどの人は1リットル以上飲んでしまう。

相当な蒸し暑さだけに、「レッスン前の2時間程度は食事を避けてほしい」(ReU高田馬場店の今井まお店長)。どのスタジオも妊婦は原則として受け付けない。血圧が高い人や、体調に不安がある人は避けた方がいい。無理せず、心地よいと感じる状態で実践してみたい。 
(ライター  藤原 仁美)


4つの基本ポーズ

 腰と背中のストレッチに効果的
・足は重ねず正座し両手は頭の上で組む。手は人差し指だけをまっすぐ伸ばして組む。
・息を吸い、吐きながら上体を前に倒す。お尻はかかとからうかないように、手はできるだけ遠くへ伸ばす
 集中力を高め、お尻と太ももを引き締める
・左足で立ち、右足は左足の付け根の辺りに置く。手は合掌
蓮の花 自律神経の動きを高める
・足を座禅の要領で組んで座る。まずは右足からかける。両足をそれぞれの反対側の足に乗せられない場合は片方でよい
・両手をひざの前に。手のひらを前に向ける
ねじり ウエストを引き締める
・左足を曲げて座り、そのうえに右足を組み立てひざにする
・上体を右側にひねる
・左手は右足のひざを支え左足のひざをつかむ感じ。右手は左足の付け根の辺りに置く。
(木、蓮の花、ねじりは、左右を反対にしてもう1回)


2005.8.27 日本経済新聞