ウオーキングでもジョギングでもない、ドイツ生まれのパワーウオーキングが日本で普及し始めた。心拍数を基準に体に負荷をかけて歩くスポーツで、ダイエットや生活習慣病の改善に効果があるという。福島県には、専用コースも整備された。子供から高齢者まで気軽にできる運動として注目されている。
パワーウオーキングを考案したのは、モスクワ五輪の50キロ競歩で金メダルを獲得したドイツ人の世界的なアスリート、ハートヴィッヒ・ガウダーさん(50)。現役引退後に細菌感染から重い心臓病を患い、心臓移植を受けた。リハビリに励む過程で、試行錯誤で編み出した。日本でもパワーウオーキング日本協会(古賀和仁会長・東京)が設立され、普及に努めている。
「パワーウオーキングはジョギングとウオーキングの中間的な位置づけ。日本で言うウオーキングはハイキングに近い。ジョギングに比べて体に対する負荷は3分の1程度、ウオーキングに比べると速度は1.5倍程度が目安」とガウダーさんは説明する。
重要なのは正しい姿勢で歩くこと。まず、つま先を進行方向に向け、意識してかかとから着地、足をロールするように地面に着けていって、再びつま先でけり出すように歩く。ミルキング・アクションと呼ばれ、ちょうど牛の乳を搾るように、ふくらはぎがポンプ役を果たして、血液の循環が良くなる。
次に腕は約90度に曲げて、ひじを中心になるべく大きく前に振る。手は軽く握って親指を上にする。
さらに背筋を伸ばして胸を張り、約5メートル前の地面を見るような姿勢を保つ。両足は腰の幅と同じぐらいに開いて、歩幅は体を前傾して自然に出るぐらいの歩行を心がける。意識して呼吸するが、肩の力は抜いてリラックスすることが肝心だ。
もう1つ重要なのは、心拍数を測って、自分の健康状態とトレーニングの目安にすることだ。最高心拍数は220から年令を引いた数値とされるが、この60%から75%の数値が、理想のトレーニング心拍数だという。パワーウオーキングの理論付けに力を入れている黒須充福島大学教授は「この心拍数の範囲が有酸素運動として一番効果が高い」と強調する。
トレーニング中の心拍数を測るには、胸部に巻くバンドと腕時計のように腕にはめる計測器がセットになった専用の心拍計があり、1万円程度で市販されている。
ウオーキングのメッカを標榜(ひょうぼう)する福島県二本松市の岳温泉観光協会は、黒須教授の指導のもと、33あるウオーキングコースのうち、9コースをパワーウオーキングの専用コースとして設定。記者は黒須教授に同行してもらって、7キロのコースを実際に歩いてみた。
ゆったりとしたウオーキングとは違って、腕を強く振り、早足で歩くので息が切れ、すぐに心拍数は最高値に近づいてしまった。
初めての経験だったこともあり、「毎日トレーニングを積めば、自分のペースをつかんで理想のトレーニング心拍数で安定させることができるようになる」と黒須教授は話す。
心拍計が理想のトレーニング心拍数を上回る数値を示していればペースダウン、下回っていればペースを上げて調整すれば良い。記者にとってはかなりの運動量に思えたが、コースを歩き抜いた達成感は大きかった。
ガウダーさんによると、パワーウオーキングはダイエットに効果があり、生活習慣病の治療にも良い。このほか@全身運動なので、筋肉を強くするA心臓が効率的に働くようになるなど循環器を鍛えるB定期的に実践することでストレスから解放される――などの効果があるという。
ただし、スポーツなので「事前のウオーミングアップと事後のクーリングダウンは入念に心がけてほしい」と付け加えた。
(編集委員 木戸純生)
頭は
首の後ろから上に引き上げるように意識する
視線は
4〜5メートル先の地面を見る
肩は
力を抜いてリラックス
胸は
張って背筋を伸ばす
腕は
ひじを約90度に曲げ、手を軽く握った状態で親指を上に乗せる
お尻は
左右に揺れないように意識する
歩幅は
体を前傾した時に、自然に踏み出すように取る
足は
つま先を進行方向に向け、かかとから着地。再びつま先でけり出す。
(ガウダー氏の著書をもとに作成) |
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