ある日突然のどが渇くようになる。水をいくら飲んでも一向に収まらず、尿の量も増える。一見すると腎臓やぼうこうの病気のようだが、脳の働きが低下して体に水分を蓄えられなくなる「中枢尿崩症」と呼ぶ病気の可能性がある。

国内には5千人ほど患者がいるとされている。腫瘍(しゅよう)による圧迫などが原因で脳から出る水分調節にかかわるホルモンが足りなくなる。1日に3リットル以上に水を飲んでも、それ以上が尿として体の外へ出てしまい、脱水気味で渇きが収まらない。

糖尿病や心因性で水をがぶがぶ飲んでしまう場合でも尿量が増えるが、血中のホルモンの量を調べれば中枢性尿崩症と区別できる。

治療は、原因となっている腫瘍を手術で取り除くのが一般的。原因が特定できない症例では点鼻薬で足りないホルモンを補い、症状をやわらげる。

腫瘍は小さいほど治療もしやすい。「急にのどが渇き、尿の量も多くなったら、早いうちに専門医に診てもらうこと」と東京医科歯科大学の平田結喜緒教授はアドバイスする。
2006.2.19 日本経済新聞