腰や足の筋肉簡単に鍛える
階段1段とばし/おしり歩き

太りすぎは体によくない。間食をせず腹8分目に抑え、こまめに運動をすれば良いが、なかなか継続は難しい。年をとると基礎代謝が落ちてくる。日常生活にちょっとしたトレーニングを取り入れ、腰や太ももの筋肉を鍛えておくと、基礎代謝の低下が防げ、肥満にならずにすむかもしれない。

基礎代謝という言葉はよく耳にするが、きちんと理解している人は、意外と少ないのではないか。

人間は何もせずにじっと横になっているだけでも、かなりのエネルギーを消費する。心臓や肺は絶え間なく動き、胃や腸も活動、体温を一定に保つように、常に体内で熱を作り出さなければならないからだ。

この生命維持に欠かせないエネルギー消費が基礎代謝。あおむけになった状態で測定する。約4割が全身の筋肉で使われているという。

基礎代謝が落ちてくるのは、40歳を過ぎたあたりから。筋肉量が減ってくることが原因だ。運動などで筋肉を増やせば簡単に上がりそうだが、実は1キロ筋肉が増えても、1日の消費エネルギーは、ごはん3分の1杯分に相当する約50キロカロリーしか増えない。

日常生活を見直すことで、上手に基礎代謝を上げる方法はないだろうか。運動生理学を専門とする東京大学の石井直方教授に相談したところ、「安静時代謝を上げる努力をしてみてほしい」とアドバイスしてくれた。

安静時代謝はいすに座ったり、まっすぐ立ったりしている時のエネルギー消費のこと。基礎代謝分に、姿勢を維持するため大腰筋やおしりの大殿筋など、体の深部にある筋肉をうまく動かす時に必要なエネルギーが加わる。「こうした筋肉がよく動くようになると、1日の消費カロリーで約150キロカロリーは違う」(石井教授)という。約45分間のウオーキングに相当するエネルギーを消費できることになる。

個人差はあるが、意識して深部の筋肉を動かすようにすると、約2週間で姿勢が良くなることを実感できるという。体重は変わらなくても、ベルトの穴が1つ小さくなる人もいるほどだ。

姿勢が良くなれば、自然と手や足の血流も良くなる。しばらく続けると体に付いている脂肪が少し落ちて、熱が逃げやすい体になる。体温をもっと作り出そうとして、筋肉がエネルギーを消費するという好循環が生まれ、基礎代謝も上がっていく。

具体的に意識したいのは、腰回りや、背筋をピンと伸ばす時に使う筋肉だ。大腰筋は、背骨と脚の太もも側の付け根を結ぶ筋肉で、太ももを上げる時に機能する。50回ほど、太ももが地面と平行になるようにその場で足踏みする。慣れてきたら、回数を増やそう。

脚を伸ばして地面に座り、左右のおしりを持ち上げながら前後に進む「おしり歩き」でも大腰筋には効く。

階段を1段とばしで上がるのも効果的。急ぐ必要はないので、しっかり踏みしめるように上がろう。大腰筋のほか、太ももの前面にある大腿(だいたい)四頭筋、大殿筋が鍛えられていく。

こうした動きを日常生活に取り入れるだけで、体形や基礎代謝がどう変化するのか。都内にある健康サポート施設、フィールファインプラザで細かく測定してもらった。

2週間ほどしか経過していないため、基礎代謝は上がっていなかった。体形に少し変化が出ていることがわかった。
体の表面にレーザーを当てて体形を立体的に調べてもらうと、胸の位置が高くなって、以前より姿勢が少しよくなっていた。

階段を上がるのが、だいぶ楽になっている実感もある。フィールファインクリニック丸の内(東京・千代田)の小川靖男院長からは「食生活に気をつけて長期間続けると、基礎代謝はじわじわと上がっていくだろう」という言葉をもらった。

太りにくい体を手に入れるには、日々の地道な積み重ねがもっとも大切なのだろう。
(鴻知佳子)


基礎代謝を上げるための簡単エクササイズ

足踏み  大腰筋
・地面と太ももが平行になるように意識する

階段は1だんとばし  大腰筋 大腿四頭筋 大殿筋
・ゆっくりふみしめる感じでよい

大またで腰を回転させながら歩く  大腰筋 大殿筋
・くつ1足分大またで歩く
・骨盤の回転を意識する

電車の中では良い姿勢で立つ  背柱起立筋 両脚で体重支える
・座りたくても20分くらいは耐える
(自宅で)おしり歩き  前後に移動 大腰筋
・10往復から始めてみる




2006.2.26 日本経済新聞