軟らかい 甲状腺異常か
黒い縦筋 すぐに検査を
手入れ時にチェックも


名刺の受け渡しなどで、荒れていると意外に気になるのがつめ先だ。最近は身だしなみとして女性ばかりか男性も気を使うようになっている。つめの形や色にはその時々の体調があらわれ、思わぬ病気が見つかることも。つめは健康を映す鏡。手入れと同時にチェックが大切だ。

「つめの変化はゆっくり進むので放置してしまう人が多い」。日本医科大学の義沢雄介助教授はそう説明する。皮膚と同じタンパク質でできているので、栄養不足や病気で肌が荒れるようにつめも影響を受ける。体調の大切なチェックポイントなのだ。

自分のつめをじっくり眺めてみよう。細かい縦筋が気になるが、これは20歳以降に始まる老化のしるしなので特に問題はない。横に走る筋もつめが作られるときに高熱を出したり、湿疹(しっしん)があったりするとできるのでこれも心配はいらない。

一方つめが軟らかく、スプーンのようにそっていたら要注意だ。貧血や甲状腺の異常がかくれているかもしれない。事実、スポーンづめがきっかけで病気が見つかることも多い。心臓や肺の病気で低酸素状態が続くと、太鼓のばちのようにつめ先が丸くふくらむこともある。

色にも着目してみよう。きれいなピンク色をしているだろうか。「一番心配なのは、黒い縦筋」と義沢助教授。良性のほくろのこともあるが、メラノーマかもしれないという。抗がん剤が効きにくく、早期の治療が特に大切な皮膚がんの一種だ。色にムラがあると悪性の可能性が高いが、素人には見分けにくい。早急に医師の診断を受けることが大切だ。

つめの色から判断できる病気はほかにもある。白い横線は栄養不足や肝臓の障害で血中のアルブミンというタンパク質が足りないとできる。つめが黄色く硬くなったら、慢性の呼吸疾患かもしれない。レントゲンを撮ることをすすめるという。つめが根もとから白くなっていたら免疫が落ちている証拠。抗がん剤や免疫抑制剤の使用で起きるほか、エイズが発症した時にもみられる症状だという。

足のつめのトラブルを抱える人も多い。典型的なのがつめが皮膚に食い込んで起きる細菌感染。きつい靴を履いていてつめが変形したり、深づめをしたりすると起きる。足のつめを切るときは白い部分を1−2ミリ残して仕上げよう。つめが食い込んでしまったらテーピングで皮膚を引っ張り、つめから離す方法を病院で指導してくれる。治りにくければ形状記憶合金の細い針金をつめの先に入れ、形を矯正する治療法もある。

つめの水虫もやっかいだ。つめが先端から白くなるほかは自覚症状はほとんどないが、放置するとつめが厚くなり、そのうちぼろぼろになる。指の水虫がつめに入り込んで起きるので、共用スリッパを履くときはなるべく靴下を付けるなどの予防が大切だ。治療は市販の塗り薬を使ってもいいし、病院でも飲み薬を処方してくれる。

病気が隠れていなくても、つめの割れは気になる。日本ネイリスト協会理事でネイルスクール・サロンのRYOKOネイルズを経営する小橋涼子さんは「つめ切りよりも専用の紙やすりを使ったほうが、負担がかからない」とアドバイスする。長ければ専用はさみで少しずつ切る。横はなるべく削らずパソコン利用が多いなら四角く仕上げる。

いくら手入れをしてもつめが乾燥する人は、カラーポリッシュを落とす除光液の使いすぎの可能性が大きい。カラーポリッシュは丁寧に塗れば1週間ほど保ち、除光液の使用回数を減らせる。色つきを良くするベースコートの順に塗っていく。どれもつめの先端を裏側から横になでるように塗り、その後つめ全体に塗っていくとはげにくい。

手入れ方法で気をつけないと、逆につめを傷めることもある。つめの根もとを覆う甘皮を切るとネイルカラーがきれいに塗れるが、自分ですると出血する可能性もあり、プロに任せた方がよいだろう。

     


つめの色から感染や発病が予想できる病気

全体的に白くなる 肝硬変や肝不全
先端から白くなる つめの水虫
白い横線が現れる 肝機能障害など
黄色く硬くなる 胸水などの呼吸疾患
緑色になる 緑膿菌の感染
黒い筋が現れる メラノーマ(皮膚のがん)


2006.4.8 日本経済新聞