肥満に悩む中高年や太りすぎを気にする若い女性が、「断食道場」を訪れるケースを見受ける。「食を断つ」ことが、一種の健康維持につながるのは確かである。イヌやネコは、体調の悪い時はエサを与えても決して食べない。断食によって回復を待つことを、自然の知恵として知っているのだ。

ただし、断食療法がどんな病気にも効くと考えるのは間違いである。たとえば、胃潰瘍(かいよう)の人が無理に空腹にすると、潰瘍を進行させ、ついには胃の壁に穴を空けてしまう胃穿孔(せんこう)になる場合もある。

体重70キロの女性が、少量の野菜、アロエのジュース、紅茶だけで百日余りの断食を行い、最終体重を50キロとしたが、断食中止とともに、1ヶ月で元の体重にもどったという。ダイエットと断食を、安易に組み合わせるのは禁物である。

(2000.9.16日本経済新聞)