歯並びや噛合わせの悪いことを「歯列不正」または「不正咬合」と呼びます。どこまでが正常でどこからが不正かというはっきりした基準はありませんが、不正咬合や歯列不正の人は、虫歯や歯槽膿漏にかかりやすい、確かな発音ができない、食べ物を噛む力や能率が低い、怪我をしやすいなどの障害があります。

最近では、とりわけ容貌に与える影響が身近な問題として取り上げられることが多くなっています。

直接の原因は明らかではありませんが、多くは、顎の形や大きさと歯の大きさとの不釣り合いが原因です。八重歯や重なり合った歯、また隙間だらけの歯などはこれにあたります。上下の歯の噛み合わせが逆になる反対咬合や上の歯が下の歯を深く覆い隠す噛み合わせは遺伝因子が強く働いていると言われます。乳歯や永久歯の形や数の異常、ある種の奇形も先天的原因の1つです。その他には、ねじれたり歯列からはみ出した歯、幅の狭い歯列やV字型歯列、上顎の歯が全体的に前に出ていたり、奥歯だけ噛んで前歯が噛み合わない噛み合わせ等が代表的です。

後天的な原因としては、乳歯のひどい虫歯や、ひどい指しゃぶり、爪を噛む癖、乳歯や永久歯の早期喪失、物を飲み込む時の悪い癖や歯ぎしり等も考えられます。この他に頭や顎の骨の成長も関係し、原因は複雑です。理想的とは言えない歯並びでも、顔立ちの個性を作っているという範囲内では、直す必要のある不正咬合とは言えません。

容貌に関係のない不正咬合でも、正確な発音や食べ物をしっかり噛むことができなかったり、知らずに顎の関節を痛めていたり、口の中の清潔を保てない場合も多くあり、これらは全身的な健康に悪い影響を与えます。

美しい健康的な笑顔や正常な口の働きは、正しい歯並びや噛み合わせによるところが大きいことを知り、不正咬合に対する関心を高めてください。

(2000.9.1医院新聞)