がんの抑制遺伝子
千葉大確認 心不全引き起こす

がんの増殖を抑える遺伝子に、意外な“悪玉”の顔があることが分った。千葉大学医学部付属病院の小室一成教授と南野徹助手らは、がん抑制遺伝子p53に、高血圧疾患者の心不全を引き起こす作用があることをマウスでの実験で突き止めた。

人間でも同様とみられる。心臓でだけp53遺伝子の働きを抑えることができれば、がんのリスクを高めずに心臓疾患死を減らせる可能性がある。

5日に英科学誌「ネイチャー」(電子版)に発表する。

高血圧患者は高い圧力で血液を送り出すため、心臓が徐々に大きくなる。研究チームはこれと似た状態のマウスを作り、心臓の毛細血管を調べた。

心臓が大きくなると当初は血管も増えるが、数週間すると逆に減り、心臓に酸素が行き渡らなくなって心不全に至る。血管を増やすのはHIF1と呼ばれる体内物質の作用だが、酸素不足が続くとp53遺伝子が作るたんぱく質がHIF1を分解し、血管が作れなくなる。

p53遺伝子が働かないようにしたマウスでは、心臓が肥大しても心不全は起こらなかった。逆にp53遺伝子を薬で活性化すると、通常の半分の期間で心不全になった。

心臓疾患者の大半は心臓肥大からくる心不全の危険にさらされている。研究チームは今後、心臓でのp53遺伝子の働きを抑える薬を探索する。
2007.3.5 日本経済新聞