食事の不摂生、寝不足
職場の乾燥大敵
保湿はこまめに

不規則な生活が続くと中高年でもニキビに悩まされることになる。特に肌を乾燥させるのがよくない。予防には適切な洗顔と保湿、しっかり睡眠をとることが大切だ。あとが残ると治療が難しい。気になる場合は早めに皮膚科で診てもらおう。

予防には生活習慣の改善が欠かせない。睡眠不足やストレス、不規則な食事などが皮脂の分泌を促し出やすくなる。これが悪いという食べ物はないが、自分でニキビができると分かっているものはできるだけ避けるようにしよう。東邦大学医学部の伊藤正俊教授は「ビタミン類は皮脂の分泌を抑制する働きがある。緑黄色野菜は意識して食べるとよい」という。

冷暖房で乾燥した室内では皮膚の角質が固くなり、毛穴が詰まりやすくなる。タバコや日焼けも肌荒れにつながり、引き金になることも。こまめに保湿しよう。ただ、クリームや油分のあるものは毛穴が詰まる原因になるので化粧水や保湿液がよい。

皮膚刺激も原因

意外と気付かないが、「髪型やマスクなどの刺激がニキビの原因になっていることが多い」と帝京大学医学部附属溝口病院の清佳浩・皮膚科科長は指摘する。毛先が当たって炎症が起きやすくなることが原因で、髪型は耳から前はできるだけ表に出すようにする。マスクやほおづえも悪化の要因になることがある。気になるからといってさわるのも厳禁だ。

女性の場合、化粧をするなら化粧品は毛穴に詰まりやすいリキッド(液体)タイプのものを避け、パウダー(粉状)タイプを使うとよい。また、朝晩2回、しっかりと洗顔すること。せっけんや洗顔料などをきちんと泡立てて洗うのがポイントだ。

こうした日常生活の改善によって「軽い人ならかなり症状がよくなる」(清科長)。

ニキビは皮脂の分泌が活発になる思春期にできやすいが、30代から40代、中には70代でもでる人は少なくない。伊藤教授によると、とくに中高年の受診者が最近増えており、「不摂生な生活や冷暖房で乾燥した職場環境も背景にあるのではないか」と解説する。

ニキビは立派な皮膚の病気のひとつ。炎症がひどくなると赤くなり、さらには膿(う)んだ状態となって、最後には皮膚が壊れてしまう。「ニキビを作らない、増やさないためには、できる仕組みを知ることが肝心」と伊藤教授は訴える。

毛穴には皮脂腺と呼ぶ分泌器官が備わっており、皮脂と古くなった皮膚の角質が塊になって毛穴が詰まることが原因でできる。思春期のニキビも中高年のニキビもできる仕組みは同じだ。

炎症は治療を
毛穴に皮脂がたまった段階では白く見える「白ニキビ」や、酸化した皮脂と残った化粧品などが混ざって黒く見える「黒ニキビ」が初期段階。適切な洗顔などを続ければ自然と治ることが多いが、炎症が加わると「赤ニキビ」になり、さらに悪化するとウミが出て「黄ニキビになる。アクネ桿(かん)菌と呼ぶ細菌が皮脂から炎症物質を作ることが原因で、こうなると厄介。皮膚科で治療した方がよい。
治療の基本は抗生物質の外用剤や内服薬などを組み合わせる。こうした薬には、アクネ桿菌を死滅させ、増殖を防ぐとともに、炎症を抑える働きもある。

保険が利かない自由診療だが、化学薬品で詰まった角質を溶かす「ケミカルピーリング」という手法も普及している。治療期間は程度にもよるが、「2、3カ月から半年かかる」と東京女子医科大学の林伸和・助教授は話す。

皮脂腺を壊す「光線力学的療法」や赤みを取る「フォトフェイシャル」という治療法もある。ただ、現段階では有効性の確認は十分でなく、専門家によって評価もまちまちだ。
自己流のケアでは皮膚の陥没やひきつれで表面がでこぼこになったり、色素沈着が起きたりする。ニキビあとを消すのは難しい。
(合田義孝)


ニキビを予防するための正しい洗顔法

1 水やぬるま湯で皮膚の汚れを流す

2 洗顔料をよく泡立てる

3 皮脂の分泌が多いおでこやあご、鼻のまわりのほほから泡で優しく洗う
4 洗顔料や汚れが残らないようによくすすぐ
5 軟らかいタオルを軽く押しあてるように水分を吸いとる



2007.3.4 日本経済新聞