栄養バランス気をつけて
睡眠しっかり
口の中きれいに

卒業、入学、転勤、人事異動など、春は生活環境が変化して何かとストレスが多い。歓送迎会が多く、食生活も偏りがちだ。そんなとき、気が付くと口の中にできるのが「口内炎」。できてしまうと物が食べづらくなり、気分も憂鬱(ゆううつ)になる。予防法や早く治す方法を専門家に聞いてみた。

「仕事でストレスを感じていて、少し体が疲れると口内炎ができる」。公務員の中村めぐみさん(仮名、46)は1、2カ月に1度は口内炎になる。1週間ほどで治るものの気分は重い。
口内炎は口の中の粘膜にできる炎症。白色や黄色の円形の潰瘍(かいよう)ができたり、粘膜に傷が付いたことなどが原因で赤くなったり腫れたりする。

ウイルスなどが原因とはっきりしている口内炎もあるが、多くは原因不明のもの。慶応大学医学部の朝波惣一郎助教授によると「睡眠不足や過労、不規則な食事、ストレスが引き金になることが多い」。

ビタミン不足影響

口内炎になりにくくするには、まず睡眠をしっかり取るなど規則正しい生活をすることが大切だ。食事の栄養バランスにも気をつけよう。女子栄養大学栄養クリニックの白野浩子講師は「粘膜を健康に保つ働きのあるビタミンB2が不足すると口内炎になりやすい」と話す。ビタミンB群は食物をエネルギーに変える時に使われる栄養素で、アルコールを多く摂取するとより多く使われる。何となく体が疲れやすい時も、不足している可能性が高いという。

ビタミンB2は赤身の魚や、レバー、豚肉、卵や緑黄色野菜などに含まれる。成人男性で1日1.6mg、女性で1.2mg程度が1日の摂取量の目安といわれる。ちなみにレバーの焼き鳥1本に0.7mg、納豆1パックに0.22mg、卵1個に0.22mg、200ccの牛乳1本に0.32mg含まれている。

管理栄養士の特定非営利活動法人「NSC2000」の渡辺聡美理事長は、「魚介、牛乳、乳製品、卵などを1日に3、4品食べると必要量を自然に摂取できる」という。ただし、ビタミンB2は水溶性で一度に多量にとっても排出されてしまう。毎回食事で取るように心がけたい。

薬塗りすぎ注意
歯磨きやうがいで口の中の衛生状態を保つことも大切。ストレスが多くなると口の中が乾燥して常在菌が増えやすくなるため、水やお茶を飲むのもいい。

それでも口内炎ができてしまったら早めに治そう。市販されている口内炎用の軟こうを使う時は、まず歯磨きで口の中をきれいにして水分をふき取り、綿棒などで患部に塗る。ただし塗るのは多くても毎食後と寝る前1回までがいい。

口内炎ができた時は、酸っぱい物、辛い物、熱い物など刺激のある食べ物は控えよう。順天堂大学順天堂医院歯科口腔(こうくう)外科の篠原光代講師は「アルコールやたばこも粘膜への刺激になるので控えることを勧める」と話す。

食事では粘膜を強化するビタミンB2とともに「体の抵抗力を上げるビタミンCやビタミンAを含む食品を一緒に食べるとよい」(栄養クリニックの白野講師)。ビタミンCというとかんきつ系の酸っぱい食べ物が浮かぶが、患部にしみて食べづらいので酸味が少ないイチゴやキウイ、ブロッコリーなどが向く。

口内炎は普通1、2週間で自然治癒するが、まれにがんや血液疾患など、他の病気の症状の1つとして表れる。三井記念病院歯科・歯科口腔外科の津山泰彦部長は「1、2週間しても治らない場合は口腔外科や耳鼻咽喉(いんこう)科、歯科などを受診してほしい」と言う。

口内炎は「睡眠や食事など基本的な生活を見直すシグナル」(慶応大学の朝波助教授)だ。できてしまったらゆっくり休養し、睡眠や食事が十分か、普段の生活を点検してみよう。


口内炎に悩まないために

〈口内炎が気になる時の料理〉
ネバネバ丼 ブロッコリーとエリンギのごまあえ 煮豆

ビタミンB2:0.74mg(1人前当たり)
●ネバネバ丼
【材料・2人分】
ご飯300グラム、マグロ赤身100グラム、納豆80グラム、ナガイモ60グラム、モロヘイヤ60グラム、オクラ60グラム、シソの葉2枚、温泉卵2個、しょうゆ適量
【作り方】
1.納豆はほぐしておく。ナガイモはスライサーで短冊状の薄切りにする。モロヘイヤとオクラはゆでて食べやすい大きさに切る
2.器にご飯を盛り、食べる直前に具を彩りよく盛り付け、中央に卵を盛る。しょうゆで頂く。お好みでサンショウを
●ブロッコリーとエリンギのごまあえ
【材料・2人分】ブロッコリー60グラム、エリンギ80グラム、練りゴマ大さじ1、しょうゆ小さじ1、ゴマ油小さじ1、塩・砂糖少々
【作り方】
1.ブロッコリーは軽くゆでる。エリンギは網焼きにして手でさく
2.練りゴマ、しょうゆ、ゴマ油、塩、砂糖と1をあえる
※練りゴマが〈口内炎が気になる時の料理〉無ければ、すりゴマでも可。ゴマドレッシングに変更してもよい
●うずら豆の煮豆20グラム(2人分)
※常備菜として用意が無ければ市販品でも可
(メニュー・レシピの作成は女子栄養大学栄養クリニックの白野浩子講師)


〈口内炎を防ぐための料理〉

菜の花とタケノコのサラダ 
ビタミンB2:0.22mg(1人前当たり)

●菜の花とタケノコのサラダ
【材料・2人分】
菜の花120グラム、タケノコ80グラム、パプリカ(黄色・赤色)各20グラム
(ドレッシング)
玉ネギ少々、サラダ油大さじ2、ワインビネガー大さじ1/2、レモン汁小さじ2、塩少々、コショウ少々、お好みでマスタード
【作り方】
1.菜の花はゆでて3センチくらいに切る
2.タケノコは下ゆでをして、穂先の軟らかいところを適当な大きさに切る
3.パプリカは5ミリ角に切りさっとゆでる
4.ドレッシングの玉ネギは細かくみじん切りにし、水にさらす。水気を切って調味料を混ぜる
5.菜の花、タケノコ、パプリカを器に盛りつけドレッシングをかける
(レシピの作成はNPO2000の渡辺聡美理事長、http://nsc2000.org/
2007.3.24 日本経済新聞