高齢者のつめ・足指トラブル注意!
歩行困難や転倒、感染症の原因にも



年をとってくると、足の指やつめのトラブルが増える。あまり知られていないが、きちんとフットケア(足の手入れ)をしておかないと、歩きづらくなり、つまずいて転びやすくなる。糖尿病の持病があると、症状を悪化させる原因にもなる。

高齢者に特に多いのがつめが厚くなったり形が変わったりするケース。巻きづめになるとつめの両側の先が皮膚に食い込んで炎症を引き起こしやすくなる。タコやウオノメなどもよくみられる。厚生労働省の支援で実施された調査によると、高齢者向け施設に入居する人の9割以上が何らかの足のケアを必要としていた。

大阪府内に住む80代の榊原良子さん(仮名)もその1人。足が痛くて歩くのもつらかったが、分厚くなったつめを削ったところ足の痛みがだいぶ和らぎ普通に歩けるようになった。足のケアを担当した看護師で爪切り屋メディカルフットケア大阪(大阪市)代表の茂木淳子さんは「高齢者が歩行困難になるのは筋力の衰えだけではない。つめのトラブルが原因となることも少なくない」と指摘する。

毎日よく観察
フットケアで最も大切なのが自分の足の状態をよく知ること。毎日、寝る前に足を観察する習慣をつけたい。つめや皮膚の異変をすばやく見つけることができれば早めに対策がとれる。また、足が常に冷たいと「血管が詰まりやすくなっている可能性もある」と話すのは新須磨病院(神戸市)創傷治療センターの北野育郎医師。こうしたケースはすぐに医師に診てもらうことが重要だ。

ケアのポイントは、入浴時、せっけんをよく泡立てて指の間や足の裏などを丁寧に洗う。つめの周りは週1回程度、毛の軟らかな歯ブラシで軽くこするとよい。せっけんが残らないようよくすすぎ、タオルで水分をしっかりふき取る。入浴できない日でもバケツや洗面器を使った足浴をこころがける。足首までつかる程度のお湯を張り5分間浸すのが基本。毎日洗えば水虫などの予防に役立つ。

つめの切り方にも注意したい。切りすぎると深づめや巻きづめを招くことになり、歩きづらくなる。茂木さんによると、「長さの目安はつめの白い部分が1ミリメートル程度残るように。形は足の指に合わせて切るのがコツ」だそうだ。

糖尿病悪化も

正しく切るためにつめ切り以外の道具を使うのもよいだろう。専用ニッパーやヤスリが千円から数千円で手に入る。ニッパーの刃はできるだけ直線に近いものを選ぶこと。ヤスリもつめ切りにに付いているものではなく、できるだけ目の細かなものが使いやすい。「高齢者の場合、ヤスリを軽くあてて一方向に動かしながら削るのがよい」と茂木さんは話す。

フットケアに細心の注意が必要なのは糖尿病の患者たちだ。合併症として足に神経障害が出ることが少なくないが、体を動かすのがよいとサイズのあっていない靴でウオーキングなどをすると、靴ずれが起き問題になることも。つめをきちんとケアしておかないと、足の指が傷つき細菌が入りやすくなる。最悪の場合、足を切断することになりかねない。

駿河台日本大学病院(東京・千代田)の糖尿病教室では、血糖値をコントロールするための食事指導と並んで足のケアにも力を入れる。フットケアを専門にする看護師の西田寿代さんは「高血糖状態が続くと血の流れが悪くなってケガが治りにくい。糖尿病を悪化させないためにもフットケアを怠らないようにしてほしい」と語る。 
(長谷川章)


つめの切り方

1.まず、まっすぐに切る
2.カーブを指の形にそろえる
3.つめの長さの目安は、白い部分が1ミリ程度残るように


2007.4.1 日本経済新聞