日常の中で習慣化


「ライフスタイル・ウオーキング」を貫く大きな概念は「日常」だ。われわれは毎日歩いて生活しているが、体を動かしたり歩いたりして生態の機能を円滑にコントロールしていることに長い間気づいていなかった。

どの臓器も使えば発達するし、使わないと衰える。けがや病気で長い間安静にしていると、筋肉はやせ衰え、運動機能も低下する。心臓や肺などの心肺機能、血圧、血糖、脂質などをコントロールする代謝機能も、体を使わないと機能不全に陥る。

電車や自動車、エレベーター、動く歩道といったものまで登場し、自分の足で歩かなくてもすむようになってきた。家庭でも、電化製品が発達し、体を動かさなくても、リモコン操作で用がたりる。現代の生活は、まことに非活動的で、楽にできている。

日常生活をもっと活動的にすることが、生活習慣病を予防する健康づくりの出発点。ライフスタイル・ウオーキングの1つの柱は、日常生活で活動的に歩く「日常のウオーキング化」といえる。

ウオーキングは、他の運動やスポーツと違い、誰でも、どこでも、1人でも、年齢に関係なく楽しめる。あてもなくぶらつく散歩や、イベントで野山、河川、湖畔、海辺をウオーキングする。花を観賞しながら史跡めぐりなど、自分の趣味や興味のあるものを求めて歩く。ウオーキングには多くの楽しみがある。

残念だが、多くの人がウオーキングを「非日常」的な出来事として楽しんでいる。豊かな実りあるものにするにはたまにではなく、日常生活に取り入れることが大切だ。

週末にでも、月1回でも、季節ごとでも、特定のイベントに毎年参加するだけでも、大きな意味で習慣化することが楽しみを継続する秘訣。歩数も結果的に増えてくる。

好きな「歩き」を日常生活に取り入れて楽しむ「ウオーキングの日常化」で、体力がつき代謝機能も改善する。爽快(そうかい)な心地よい、豊かなウオーキングライフを楽しむことができると、体と心が健康になっていく。

(日本ウオーキング協会副会長  泉 嗣彦)

2007.7.15 日本経済新聞