紫外線・プールの塩素 油断大敵
すすぎ、乾燥 手をぬかず

紫外線やプールに海水浴……。夏本番、髪にとっても厳しい季節がやってきた。でも、日々のちょっとした気遣いで傷みを抑えることはできる。この夏、指先を通して伝わってくる自分の髪の状態に「聞き耳」を立ててみてはどうだろう。

夏の紫外線は侮れない。外に出て、肌が赤くなるまでに冬なら2時間、夏は20分しかかからないという。当然、髪にも影響が出てくる。

外回りも多い会社員の西田由希子さん(31、仮名)は、この時期、日差しがいまいましい。「髪が日焼けしてしまい、キシキシして指通りが悪くなってしまう」からだ。

髪の毛は、ケラチンと呼ばれる硬い繊維状のたんぱく質の束を、キューティクルというたんぱく質の膜で覆った電気コードのような構造と思えばよい。紫外線を受けると、キューティクルの表面が傷み、ぱさつきが出てくる。ひどくなると、破れてケラチンの束が露出し、枝毛や切れ毛の原因にもなる。

髪は死んだ細胞

普段の外出時は、やはり髪を束ねて帽子をかぶったり、日傘を差すなどして日差しを避けるのが賢明だ。特に注意が必要なのは、海やプール。キューティクルの表面が傷みやすくなる。髪に含まれるメラニンが分解されやすくなり、変色する原因ともなる。弱アルカリ性の海水は普通の水よりも、メラニンを分解しやすい。

プールの場合、消毒用塩素がクセ者。紫外線同様、キューティクルの表面を傷める上、きちんと洗い流さないと髪に残留してしまう。水シャワーで十分洗い流すことが大切。花王総合美容技術研究所の杉野久実・主任研究員は「海やプールではスイミングキャップをかぶるのも効果的」と語る。

日々の手入れではどこに気をつけるべきか。杉野主任研究員は「髪自体は“死んだ細胞”のため、自己再生力がない。だからこそ、毎日のメンテナンスが重要」と強調する。

まずシャンプーだが、東京医科大学の坪井良治教授(皮膚科)は「さほど汗をかかない環境の人なら、シャンプーは2日に1度程度で十分」という。髪はぬれると絡みやすいので、シャンプー前に目の粗いブラシなどで、あらかじめ髪のもつれをといておく。

次に湯で髪を十分、ぬらして、汚れをある程度洗い流す。シャンプーはしっかり泡立てて髪になじませ、地肌を指の腹でマッサージするように洗う。泡だっていないと髪同士を摩擦させてしまい、傷みの原因になりかねない。

コンディショナーは「全部流れ落ちてしまったのではないかと心配になるくらい」(杉野主任研究員)すすぐ。髪の表面にコート成分をきれいに薄く残すことができ、なめらかな手触りになるという。

特に注意が必要なのが髪の乾かし方だ。夏は自然乾燥でおしまいにしがち。それでは毛先や表面から乾いて内側はなかなか乾かない。ぱさつきの原因になるうえ「スタイルも決まらない」(杉野主任研究員)。とはいえ、ぬれたままの髪にいきなりドライヤーをかけるのはNGだ。「髪の中の水分が沸騰して髪が破裂してしまう」(坪井教授)。朝、寝癖直しのため、水でぬらしてドライヤーをかけるのが、一番よくない。

こするのは厳禁
ポイントは地肌を乾かすこと。まずタオルで根元を指で押さえるような感じでふき取る。髪先はタオルで軽くたたく感じで水気を十分とる。こするのは厳禁だ。

ドライヤーをあてる際は、根元内側に手を入れて、頭の斜め上から髪の流れに沿って乾かしていく。特に後頭部は乾き残しが多い。髪をしっかりと持ち上げてドライヤーをあてるのがよい。温風で乾かした後、冷風を当てると根元の乾き残しを見つけやすい。根元を乾かすことでスタイルも決めやすくなる。

空調で乾燥するオフィス環境の髪への影響はほとんどない。「出勤前にきちんと髪を乾かしていないことが問題」(杉野主任研究員)だ。

直接的な痛みがないせいか触った感触で傷んでいるのがわかっても、つい普段と同じ手入れをしてしまう。坪井教授は「髪の手入れはカシミヤのセーターの手入れと一緒。やさしく扱ってあげることが何より重要」と語る。夏は、日々のヘアケアをきちんとしているかどうか如実にわかる季節と心得た方がよい。


夏のヘアケアの主な注意点


種類

影響
対策
紫外線 キューティクルの表面を傷める
→ ぱさつき、切れ毛、変色の原因に
帽子、日傘などで髪の毛をカバー
海・プール 海……髪のメラニンが分解されやすくなる
プール…塩素は紫外線と同様、キューティクルの表面を傷める 
→ ぱさつき、切れ毛、変色の原因に

スイミングキャップがある程度効果的
あがったら水シャワーで充分そそぐ

オフィス

環境的にあまり影響なし 出勤前にきちんと髪の乾燥を


 



2007.8.11 日本経済新聞