食中毒の3大原因

食中毒とは食品衛生法では「食品、添加物、器具もしくは容器包装に起因する健康障害」となっています。ものを食べたり飲んだりしたときに起こる腹痛や下痢、嘔吐などの急性胃腸炎などの症状が典型的です。食中毒の原因は大きく分けるとつぎの3つです。

1.細菌性中毒・・・微生物が食品の中に混入して起こる
2.自然毒・・・フグや毒キノコ、トリカブトなどの動物性、植物性の毒によって起こる
3.化学物質・・・メタノール、ヒ素、シアン化合物などの化学物質によって起こる

一番多いのが1.の細菌性食中毒です。細菌は食品の中で増えるので食品の取り扱いを誤ると被害がどんどん広がります。そこで、細菌性食中毒の防ぎ方を中心に予防法を考えてみましょう。

食中毒が起こる条件


食中毒を起こす菌はどこにいるのか? 主な細菌と感染源となる食品を表にしてみました。

食中毒が起こる条件は第一に細菌の「感染源」があること、第二にその細菌が私たちの体の中にはいるまでの道筋である「感染源」があること、そしてそれらの細菌に対する私たちの体の抵抗力が問題です。同じものを食べても具合の悪くなる人と悪くならない人がいます。これを「個体感受性」といいます。「感染源」「感染源」「個体感受性」の3つの条件がそろったとき食中毒の感染症となって現れます。

これらのうち、もっとも予防しやすいのが「感染経路」を絶つことです。なぜならほとんどの「感染経路」は食べ物や飲み物など目の前にあるものですから、取扱いを誤らなければかなりの割合で防ぐことができるからです。


食中毒予防は菌を「付けない、増やさない、殺す」が原則です。
これをポイントに食中毒を無くしましょう。

1.食べ物を買うとき
  ・肉、魚、野菜は新鮮なものを選ぶ
・消費期限を確認する
・生物は一つずつビニール袋に入れる
・買ったらなるべく早く帰る
2.保存するとき
  ・持ち帰ったら冷蔵冷凍の必要なものはすぐに冷蔵庫にしまう
・冷蔵庫には詰めすぎない
・冷蔵庫は10度以下、冷凍庫はマイナス15度以下を維持する
・肉、魚、卵にさわったら必ず手を洗う
3.調理の下準備
  ・生肉や魚を切ったまな板や包丁は一度洗ってから他のものを切る
・冷凍したものは室温で解凍しない
・包丁、まな板、ふきん、たわし、スポンジなどは使った後すぐに洗剤と流水で洗う
4.調理するとき
  ・加熱の必要なものは十分加熱する
・料理の途中でそのまま室温に放置すると細菌がついたり繁殖するので、もし途中で止めるときは冷蔵庫に入れる
5.食事するとき
  ・食卓に着く前に手を洗う
・温かい料理は65度以上、冷やす料理は10度以下に保つ
・食品は原則として長く室温に放置しない
6.残り物の処理
  ・残った食品は浅い容器に小分けして早く冷えるようにする
・時間が経ちすぎたら思い切って捨てる
・残り物を温め直すときは75度以上に加熱する
・味噌汁やスープは沸騰するまで加熱する

台所は細菌の関所です。食べ物を買ってきてから料理して食べるまでにこれだけ気を付ければ、食中毒にかかることはぐんと減るはずです。要点を挙げてみましょう。

1.
生鮮食品を買ったらなるべく早く持って帰る
2.
水分が漏れるようなものは一つずつビニール袋に分ける(菌を移してしまうことがあるから)
3.
手を洗う時は指輪や時計を外す。何度も使ったハンカチも雑菌が繁殖していることがあるので使わない
4.
海の魚は真水で洗う。(腸炎ビブリオは塩が好きだから)
5.
野菜も流水で洗う。ボウルの水では離れた菌がまた付着するので意味がありません。
6.
肉は加熱するのが基本。特に冷凍肉は解凍したときに菌が中まで浸透するのでよく焼くこと。
7.
食器はシャワー水栓で洗う。シャワーで洗うと菌が飛び散りません。
8.
まな板は細菌が付着しやすいので軽くスポンジで洗った程度ではダメ。洗剤を付けたたわしでこすり、ふきんをのせて熱湯をかけ、塩素系の漂白剤に1分以上付けて殺菌し流水で洗い落として日光で乾かす、これが正しいまな板の洗い方。
9.
包丁は刃だけでなく付け根の柄との境目に菌がたまりやすいので要注意。
10.
スポンジは洗剤を含んでいるからと放っておいてはダメ。菌は洗剤程度では死なないのでよくもみ洗いし水気を切って日光で乾かすこと。
11.
瓶入りの食品は冷蔵庫にしまう前に蓋のまわりを良く拭くこと。
12.
卵は殻の外にも菌が付いている場合があるのでパックごとしまう。
13.
冷凍食品を室温で解凍するとその間に菌が繁殖するので、冷蔵室か電子レンジで解凍する。
14.
食品の日付表示には2種類あります。品質期限(賞味期限)はおいしく食べられる期限ですが、消費期限は腐敗や劣化が起こらず安全に食べられる期限ですから、消費期限を過ぎたものは食べないこと。


食中毒かなと思ったら次のことに注意しましょう。

1.
激しい下痢や嘔吐をすると脱水症状を起こしますからその分水分を補給する必要があります。その際にはただの水よりも塩を少し入れたおも湯、スポーツドリンク、常温に近いお茶等がよいでしょう。
2.
吐いたものが肺につまらないように横を向けて吐きやすい姿勢にしてあげましょう。
3.
発病と少しでも関係ありそうなものはすべて医師に伝える。
4.
もし下痢に血が混じっていたらすぐに病院へ。患者さんの衣服は煮沸するか捨てる。乳幼児と一緒にお風呂に入らない。
5.
けいれん、むくみがでたらすぐに病院へ。O-157の場合容態が急変する危険があります。
6.
市販の下痢止めは飲ませない。薬はまず医師の指示を聞いてから飲むこと。



食品を加熱すれば食中毒は防げますか?
  加熱してすぐ食べればほとんどの場合は大丈夫ですが、黄色ブドウ球菌の作る毒素のように、100度で30分加熱しても元気でいる菌もいます。加熱は有効ですが絶対ではありません。
冷凍室と電子レンジを使っていれば食中毒は心配ない?
  冷凍庫では菌は眠った状態ですが死んだわけではありません。注意しなければいけないのは解凍するときです。電子レンジで温めてすぐに食べるような場合はまず大丈夫ですが、常温で自然解凍していると菌が繁殖する恐れがあります。なお、電子レンジの電磁波に殺菌効果があるかどうかは証明されていません。
缶詰や瓶詰め、真空パックの食品は安全ですか?
  食品衛生法を守って作られる缶詰や瓶詰めであれば大丈夫です。真空パックはこうした規定がないので安全とは断言できません。
においや見た目で食中毒を起こす食品が見分けられますか?
  食べ物が傷んでいなくても菌が存在していることがありますから見分けはつきません。
梅干しやしょうがで食中毒の予防ができますか?
  決定的でありません。梅干しに含まれるクエン酸、しょうがに含まれるジンゲロン、シソのペリラルデヒド、にんにくのアリシン、ドウガラシのカプサイシンなど抗菌作用があると言われているものはあります。その中でクエン酸は胆汁と一緒になって菌の増殖を抑えることが明らかになっています。


(2001.6.21 月刊デンタルパワー)