公共の体育館、図書館が、多忙なサラリーマンやOLにもぐっと魅力的な施設になりつつある。利用料が安いことに加え、民間のスポーツクラブ並みの設備を整えた体育館や、夜遅くまで開いている図書館が登場するなどサービスの拡充が目立つようになっている。不景気だからこそ自分への投資が欠かせない昨今、意外に使える身近な公共施設を見直してみた。


体育館・図書館に個性派サービス
体力向上へ助言   夜遅くまで利用
賢 く 使 う

公共の体育館、図書館が、多忙なサラリーマンやOLにもぐっと魅力的な施設になりつつある。利用料が安いことに加え、民間のスポーツクラブ並みの設備を整えた体育館や、夜遅くまで開いている図書館が登場するなどサービスの拡充が目立つようになっている。不景気だからこそ自分への投資が欠かせない昨今、意外に使える身近な公共施設を見直してみた。

磨き込まれた木の床の一室にウォーキングマシンや筋力を鍛える機器など50台が並ぶ。4月下旬の週末、大阪府池田市の五月山体育館のトレーニングルームでは、男女30人ほどが汗を流していた。「民間のスポーツクラブに通っていたけれど、こちらに乗り換えた。施設は申し分ないうえ料金が民間のクラブのほぼ半額」と市内在住の男性会社員(60)は話す。

体育館はトレーニングルーム、プールなどを備え、地下1階、地上3階の総床面積約1万平方メートル。96年のオープンで、ジムとプールだけで月平均1万4千人が訪れる。

ジムの料金は1日800円で、1ヵ月有効の定期なら4800円とさらに手ごろ。フィットネスクラブだと月1万円前後が主流だ。しかもサービスはきめ細かい。最初に体調、体力をチェックし、専門トレーナーが目的に応じた運動メニューを作る。機器の使い方はマンツーマンで指導。

「利用者を常にサポートするよう気配りしています」とジムの責任者、起和博さん。利用20回目、30回目といった節目にトレーニング内容を見直す。利用時間は平日は朝9時から夜9時まで。

自治体にとって市民の健康は重要課題。特に中高年層にスポーツ施設の利用を促すため、内容を充実させる動きが広がっている。東京都渋谷区の東京体育館は、運動の方法がわからない初心者から特定の競技の腕を上げたい人まで、幅広く相談に応じている。運動の経験や心電図、血圧などをチェックし、医師の診断を経て専門の相談員がアドバイス。料金は1100円だ。

兵庫県伊丹市のフィットネスラスタでも医師が月2回、健康相談に応じる。また、秋田県の湯沢市総合体育館は40歳以上の市民に今春から無料でジョギングコースを開放している。

体力とともに知力も磨きたい。本を買わずに無料の公共図書館を利用すれば家計が助かるとわかっていても、仕事に追われる平日に立ち寄る時間を作るのは一苦労。そんな人向けのサービスを2年前から提供しているのが秋田市立中央図書館明徳館だ。

自宅のパソコンからホームページに接続すれば、市内3ヶ所の図書館の蔵書約45万冊を検索をしたり、読みたい本を予約したりできる。午前9時から午後11時まで。受け取る図書館は便利なところを指定でき、用意でき次第、電話で連絡してもらえる。

ネット予約は昨年時点で月約600件とスタート当初に比べ倍増。「今秋にはさらに長時間利用できるようシステムを変える計画」と菅原展子館長は言う。山口県の下関市立図書館、埼玉県の所沢市立図書館などネット検索・予約サービスはここ数年、全国で急速に広がっている。

予約どころか24時間利用可能――。長野県の川上村文化センター図書館では95年のオープンからこんな運営の方法。通常の開館は午前9時から午後5時だが、他の時間帯でも本やビデオを借りられる。夜間は基本的に無人だが、磁気カードで開閉する入退室するシステムと「自動貸し出し機」で対応。無断の持ち出しには警告音が注意を促す。

貸し出しは文芸作品だけではない。北海道の鹿追町図書館は漫画3500冊をそろえている。群馬県の高崎市立図書館ではビデオ、音楽CDなど4万点を収蔵。昨春からは全国で初めて語学やゲームなどのCD−ROM約300点も貸し出している。

「自治体の在勤、在住者以外でも利用可能にするなど、独自の方針を打ち出す施設が年々増えている」(日本図書館協会事務局)。公共施設の使い勝手は今後も一段と良くなりそうだ。

(2001.5.5 日本経済新聞)