歯は栄養素をとる源



 80歳になっても自分の歯を20本以上残している人は、若々しくて元気な人が多い。その1つの原因は、日常栄養のバランスのとれた食事をしっかりとることができるからだ。東京都老人総合研究所の研究によると、高齢者で食物を十分噛(か)める人と噛めない人の各栄養素の充足率を調べたところ、噛めない人はビタミンB類とC以外の栄養素は、すべて不足していたという。

 健康長寿を得るためには、その人に必要な総エネルギーやたんぱく質などが不足していたのでは健康づくりはとてもおぼつかない。
 2005年の歯科保健実態調査によると、日本人の場合、80歳では歯は10本程度しか残っていない。歯の数が少ないと咀嚼(そしゃく)力が弱くなる。歯が全部残っている状態を100%とすると、1本抜けたときには約80%に、奥歯が喪失した状態では、約40%まで落ち、味覚も衰えるという。
 よく噛むことができないので、唾液(だえき)の分泌量が減少し、口の中が乾燥するためだと考えられている。歯が抜け落ちる大きな原因は、歯周病だとされ、その予防には、歯みがきを励行し、よく噛んで食べ、定期的に検診を受けることが大切だ。それと日常的に、ゴボウや昆布などの硬いものをとって噛む力を養い、唾液の分泌を促すことも必要。

 歯がなくなって食べたいものが食べられなくなっては、人生の大きな楽しみも失ってしまう。歯は身体全体に影響を与えるので、日ごろから歯の健康に十分に気をつけよう。
(新宿医院院長  新居 裕久)

 

2008.1.5 記事提供 日経新聞