体内でがん細胞が転移する様子などをナノメートル(ミリメートルの100万分の1)単位で撮影する装置を、東北大の権田幸祐講師(医工学)らが開発した。
動画としては世界最高精度とされ、がん転移のメカニズム解明や抗がん剤開発に役立つ成果という。19日の米科学誌「ジャーナル オブ バイオロジカルケミストリー」に発表する。
体の働きを調節するたんぱく質や薬の分子1個は数-数十ナノ・メートルと微小。そこで権田講師らは生きた動物の一部を切開し、9ナノ・メートル四方まで分解して撮影できる装置を製作。さらに、心拍などの影響をほとんど受けないように撮影法を改良した。
権田講師らは、マウスの腰に移植した人の乳がん細胞の表面を蛍光粒子で着色して転移の過程を観察。一部のがん細胞が元の固まりから抜け出した後、近くの血管に入り込み、内壁にへばりつくまでをとらえた。
がん細胞が移動に使う触手のような突起を出したり、細い血管を通り抜けるために体を細めたりする様子も観察。がん細胞表面のたんぱく質が、血管に近づくほど活発に動くことも確認できた。権田講師は「抗がん剤や細胞中のたんぱく質の動きも撮影できる」としている。