リウマチ R学会、MTX増量へ

日本リウマチ学会 MTX増量、
来年度中に承認の見込み

 日本リウマチ学会(宮坂信之理事長)は来年度の運営方針の1つに、「グローバルスタンダードに合致した学会」を位置付けている。その実現に向けた具体的施策として、以前からメトトレキサート(MTX)成人用量増量に向けた活動を展開。その努力が実を結び、来年度中には承認にこぎ着けられると見込んでいる。また、社会に開かれた学会を目指し、コメディカルを対象にした「リウマチ治療コーディネーター制度」の確立に取り組んでいく。

 MTX最も有効性の高い抗リウマチ薬で、関節リウマチ(RA)患者の関節破壊の抑制や遅延について、世界的にエビデンスが示されている。また、効果が用量依存的であることも確認されている。昨年発表された米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会合同の新分類基準は、早期にRAと診断した患者にMTXを使用し、関節破壊を阻止することを目的とした。

  ただし国内においては、欧米に比べてMTXの使用が制限される状況が長年の問題となっている。欧米での成人用量上限は週25mgなのに対し、国内では8mgが上限だ。添付文書上は、RAへの第一選択薬とすることも認められていない。宮坂氏は「MTXはRA治療の根幹になる薬剤というのが世界の常識。ただ日本では必ずしもそうではない」と危機感を募らせる。

 このような状態を打開するため、リウマチ学会は国内で行われたRA患者のコホート(IORRA、REAL、NinJa)研究を解析。MTXを週16mgまで増量するとRA治療の有効性は用量依存的に向上し、安全性には有意な変化が認められないとの結論を2008年11月に提示した。

 この結果を基に、16mgまでの増量を厚生労働省へ要請。宮坂氏によると現時点で、新たな臨床試験を必要としない公知申請の手続きに入る段階にまで、医薬品医療機器総合機構(PMDA)と申請を担うワイスの協議が進展しているという。宮坂氏は「順調に進めば1年以内に16mgが承認されるのではないか」との見通しを示す一方で、「今の状態が続くと患者が不利益を被る。だからこそMTX上限撤廃は学会の悲願」と力を込める。

MTX診療ガイドライン策定へ

 リウマチ学会ではMTX増量承認に備えて、今夏までに「MTX診療ガイドライン」を策定。「16mgをいかに安全に使いこなすかという点を、学会の責任として自ら示す」(宮坂氏)試みを進める。

 一方、生物学的製剤とMTXの併用では課題が浮上している。例えばエタネルセプト、アダリムマブはそれぞれ、MTXとの併用で、より有効性が高く副作用も少ないというエビデンスが出ている。

 しかし宮坂氏によると、国内ではMTXを十分に使い切れず、安易に生物学的製剤が単剤投与されるケースも少なくない。単剤投与の継続は治療効果低下や副作用発生、医療費の負担増として跳ね返ってくる可能性があるという。

コメディカルにも会員資格

 また、リウマチ学会では社会に開かれた存在となるため、基礎研究者、看護師、薬剤師、理学療法士らを、会員の対象として明確に位置づける。生物学的製剤の台頭などにより、臨床現場ではコメディカルの協力によるチーム医療が欠かせない状況になっているといい、専門の教育を提供するためにも会員資格を拡充する。

 さらに看護師と薬剤師を対象とした、リウマチ治療コーディネーター制度の創設も視野に入れる。リウマチ性疾患患者に最良の薬物治療環境を提供することを目標にしており、具体的には生物学的製剤投与患者における副作用の管理や、自己注射の指導などを担う人材を育成する。

  このほか学会では、診療ガイドライン作成事業にも注力する。エビデンスレベルに基づいたガイドライン作成を見据え、若手教育事業を来年度中に立ち上げる予定だという。

2010.3.25 記事提供:Montly Clinical News