この度、フロリダ州政府柑橘局により、
ハーバード大学が作成した
「フルーツ・野菜摂取量と脳梗塞のリスクの関連」の
レポートが発表された。
その調査規模や効果数値の大きさから
アメリカでも非常に注目されたニュースだったが、
フロリダ州政府柑橘局では
日本でも積極的にこの情報を広める活動を行う予定である。
今回は同局の今後、5ヶ年戦略プランとともに、
このニュースの内容を紹介する。

 

■痴呆症の原因でもある脳梗塞の リスクが柑橘類の摂取で軽減

アメリカ医師会雑誌(JAMA)の1999年10月6日に掲載されたニュースで、グラス1杯のオレンジ、またはグレープフルーツジュースを飲むことで、心臓発作・脳梗塞のリスクが25%低下する場合があることが発表された。

アメリカでは1日に5種類の果物と野菜を食べて病気を予防しようという「5 A DAY(ファイブ・ア・デイ)」が人々に定着しているが、アメリカの保険専門家は今回の研究成果がアメリカ人を今まで以上に食生活改善に駆り立てることになるのではないかと期待している。「この結果が示すものは“果物や野菜をもっと食べましょう”という基本的なメッセージ以上のものです。なぜなら、発症予防の効果があるというだけで、多くの人に正しい食品をもっと摂るように納得させるには十分だからです」(ウイスコンシン州ラクロスのガンダーセン・ルーター派メディカルセンターの管理栄養士/ルース・ラメイヤー氏)。

今回の研究では果物と野菜全般の日常的な摂取が発症のリスクを約30%低下させることが明らかにされ、特にオレンジやグレープフルーツなどの柑橘類、小松菜やブロッコリー、芽キャベツのようなアブラナ科の野菜が効果的であるとされた。野菜全般の摂取の増加は発症のリスクを4%低下させたのみであるのに対し、アブラナ科野菜をより多く摂った場合の低下率は32%、果物全般では11%低下であったのに対し、グラス1杯のオレンジジュースでは25%低下した。

ではなぜ、アブラナ科の野菜より柑橘類が特に注目されるのか。「人々は日常生活に実際に適用できる、使い勝手がよく、手頃な料金の味覚の美味しい情報を得たいのです。芽キャベツを毎食摂れば健康に良いということはわかりますが、それを聞いただけでは実行する気にはなりません。でも、オレンジジュースと言われれば、美味しくて大抵の家の冷蔵庫に入っているし、グラスに注いで飲むほど早くて簡単なことはありません。」(ラメイヤー氏)。

■日本の脳血管死亡率はアメリカの約2倍

「1997年の日本の租死亡率は人口10万人当たり癌220人、心疾患112人、脳血管疾患111人であり、アメリカと比較して、その数字はアメリカの約2倍程度です。筋梗塞に比べ脳卒中は3倍発症しており、その脳卒中の中でも約8割が脳梗塞です。そしてさらに、老人の痴呆の半数は多発性の脳梗塞によるので、日本人にとって、脳梗塞の予防に関してのニュースは極めてインパクトのあるものだと思います」とは、今回の記者発表のスピーカーを務めた駿河台日本大学病院循環器科科長で医学博士の久代登志男氏。

今回の研究内容が信頼できるものと久代氏が考えている理由としては、約12万人もの中年男女を8〜14年という長い期間調査しており、喫煙、高血圧、代謝疾患の有無などの影響を除外して解析できている点、発症後に調査するようなタイプではなく、無作為に大人数を調査している点などからである。また、ハーバード大学では今後もこの調査を続けていくとしており、調査対象者が高年齢になるにつれ、さらに良好な結果が出るのではないかとの期待も高い。

■ネガティブな予防からポジティブな予防に

日本では米中心の食生活のおかげでアメリカに比べても心臓病の発症割合が低いが、脳梗塞では逆に日本の発症率が上がってしまう。双方を予防できれば、高齢でも元気に過すことができるだろう。

久代氏は次世代のために伝統的な日本食の良さを残しつつ、柑橘類や青菜を含めたメニューを提案することも必要だと言う。「今回のような大規模な調査を日本で行うことは現時点では難しく、調査内容から考えてもアメルカと比べて日本での結果に大きな差が出るとは考えにくいと思います。果物や野菜を効果的に摂取することによって、日本でも健康で長生きできる人が平均的に増えてくるのではないでしょうか。また、タバコをやめたり、食事制限をするような我慢するネガティブな予防より、毎日グレープフルーツを半個食べる、オレンジジュースを1杯飲むというようなポジティブな予防法のほうが、気楽に実行できるでしょう」。

■フロリダ州政府柑橘局では柑橘類の健康面での利点を積極的にPR

フロリダ州政府柑橘局では、事前に開催した1999/2000トレードセミナーにおいて、この研究結果を日本でも大々的にPRしていくことを発表している。アメリカではすでに、オレンジジュースをはじめとする柑橘類が身体に良い影響を及ぼすことをポスターやPR広告、パッケージなどを有効に活用し、人々の健康に対する意識改革としても、販売実績としても大きな効果を上げている。

「インターネットなどの事例を考えても、現在マーケティングでアメリカは日本を引っ張っていると言えるでしょう。現在、食品の中でもジュースのような嗜好品はアメリカでは無駄なものにはお金を使わず、使うのであれば身体に良いものを手に入れたいという方向に動いています。そのためにデータを非常に重要視しており、データ結果をわかりやすく告知することによって販売量も大きく変化するのです。日本でも近いうちに同じような動きが起こると考えています」(フロリダ州政府柑橘局)。

■日本マーケットに焦点を絞った5ヶ年戦略プラン

アメリカでの実績を生かし、フロリダ州政府柑橘局では“フロリダ産柑橘類は美味しいだけでなく、とても健康に良い”をキーメッセージにさまざまなPR、プロモーションなどを行う5ヶ年戦略プランを展開する予定だ。このプランでは、今後5年間で現在1000万カートンである輸入量を1500万カートンとすること、リテーラーに毎年10%の売上増のためのサポートを行うことを目標として掲げている。「キーメッセージを軸に、消費者動向を変えるためのマーケティング戦略の提案、売上高と利益率を上げるためのマーケティング提案を目的とします。今後の展開には私達とリテーラー、双方のパートナーシップと各リテーラーに合わせたカスタムメイドのプログラムなどが重要になってくると思います。例えば店舗の売上データを預かり、私たちの所有するシステムで分析し、それを店舗に情報として戻し、その後の販売に生かすことも可能です。共に皆様のお店に合ったフロリダの柑橘類の販売計画を作成しましょう」(フロリダ政府柑橘局 ダン・サンタジェロ局長)。

全フルーツと全野菜摂取量と脳梗塞発生頻度
フルーツまたは野菜が毎日1食増えるごとに、脳梗塞が6%減少した。
全柑橘類摂取量と脳梗塞発生頻度
フルーツのうちで柑橘類の影響が最も大きく、全柑橘類(生、ジュース)が1食増えるごとに19%減少した。この影響は女性(25%)のほうが男性(10%)より顕著であった。
全柑橘類ジュース摂取量と脳梗塞発生頻度

柑橘類ジュースを毎日1杯以上飲んでいる群は、飲まない群より25%少なかった。

 

(2000.4/1号 Chain Store Age)