脳卒中は冬に起こりやすいと思っている人が多いが、脳卒中の1つの脳梗塞は夏にも多い。脳梗塞(こうそく)は近年増加傾向にあるが、その理由としては、食生活の欧米化などによって、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が増えたことと高齢化にある。

脳梗塞が夏に多い原因としては、発汗による脱水での体内の水分不足。そのため血流が悪くなり、血栓(血液の塊)が脳の血管に引っ掛かって起こってくる。

また、夏の脳梗塞は夜間に発生しやすい。調査によると、全体の40%ぐらい。就寝中の発汗で脱水が起こりやすいことや、夜間に血圧が下がりやすいことなども関係しているという。体内の水分が不足している状態で、血圧が下がると、血流が滞って血栓ができやすくなるからだ。

その対策としては、昼間や就寝時には水分を十分にとる必要がある。具体的には、食事内の水分を考慮に入れて、1日水分としては1.2リットルぐらい補給する。ところで、ここで注意しなくてはならないことは、水分の内容である。

一般に水を飲むとその40%ぐらいが尿として排出されるが、アルコール飲料の場合は、アルコールが脳下垂体後葉にある抗利尿ホルモンを抑制し、尿の排出が増加してしまう。ビールの場合は1リットルとると、それを上回る1.5リットルぐらいの水分が尿として排出されてしまうという。

アルコール飲料を飲んで酩酊(めいてい)したころにトイレに頻繁にいきたくなるのはこのため。アルコール飲料をとる場合には脱水状態が起こりやすいので、いつも以上に水分の補給が大切だ。
(新宿医院院長  新居 裕久)


2007.8.11 日本経済新聞