あなたの骨は大丈夫?

骨粗しょう症が若年化
乳製品の摂取が肝心
過度な運動、日光浴も欠かせず

偏食や運動不足が原因で骨粗しょう症になる人が増えている。高齢者の疾患と思われがちだが、妊娠によって若い女性にも症状が出ることがあるという。日ごろの「骨づくり」が欠かせない。

「自覚症状がほとんどないため、骨折して病院に行くまでわからないことが多い」と埼玉骨疾患研究センター所長で骨粗しょう症に詳しい医師、板橋明さんは問題点を指摘する。骨粗しょう症の主な原因はカルシウムの摂取不足。骨がもろくなり、その結果、骨折をしやすくなる。

高齢者がかかるものと思われがちだが、妊娠期や出産後に起こることもある。主な原因は胎児や乳児のためにカルシウムが急激に減少することとホルモンのバランスが崩れること。だが、「若いうちからのダイエットによる変色も影響しているのでは」とエヌ・エスクリニック(東京・八王子)院長で婦人科医師の葉梨秀樹さんはみている。

骨粗鬆症財団(東京・中央)では現在800万人から1100万人がかかっていると推計している。背骨がつぶれて腰が曲がったり背が縮むなどで発覚する。最も多いのは骨折だが、手や腕などの小さな部位だと見逃され、骨折の治癒だけで終わってしまう。また、減ってはいるが骨粗しょう症を「老化によるもの」として本格的に治療されないケースがあると板橋さんは指摘する。

骨粗しょう症は骨の強さ、つまり骨量や骨密度で判断する。ただし測定方法や測定器によって値が変わるため、成人の平均を基準とし、それとの比較で表す。この値が80%以上なら正常、70%以下だと骨粗しょう症とされる。測定にはX線や超音波を使うので痛みはなく、所要時間も10分程度である。不安な人は内科や婦人科、整形外科などで相談してみるといいだろう。

成人が1日に必要なカルシウム量は約600ミリグラムだが、実際に摂取量はこれより10−15%ほど不足している。カルシウムをとるには牛乳が手軽だ。コップ1杯(200グラム)中にカルシウムは220ミリグラムも含まれており、これだけで必要量の3分の1がまかなえる。プロセスチーズなら20グラム(約1個)あたり126ミリグラムだ。

だが「牛乳や乳製品は太ると考えている人が多い。間違った知識によるダイエットが、特に若い女性のカルシウム摂取量を減らしていると感じている」と戸板女子短期大学学長で栄養学に詳しい江澤郁子さんは指摘する。小松菜やししゃも、納豆、豆腐などにもカルシウムは含まれるが、乳製品を除くとかなりの量を取らなければならず、現実的ではない。

「食事をつくるときの少しの工夫や外食時のちょっとの注意で、600ミリグラムは無理なく取れる」と江澤さんはアドバイスする。またカルシウムは体内に蓄えることが難しく、まとめて摂取しても意味がない。「毎日こつこつと摂取することが大事」(江澤さん)と注意を促す。

骨を丈夫にするためにサプリメント類を利用するのもいい。カルシウムを効率よく骨にするたんぱく質の一種がBPと名付けられている。製品などに、この成分を多く含む商品が増えている。

カルシウムの摂取以外に「適度な運動と太陽に当たることも不可欠」(板橋さん)という。運動は骨に負荷をかけて代謝を促し、日光はカルシウムの体内吸収を助けるビタミンDを作るのに欠かせない。葉梨さんは「ほんの少しの心がけで、骨粗しょう症を防げる」とアドバイスする。


骨のチェックシート


【ライフスタイル】

■外食は1日1食以下
■座っている時間が少ない
■過度なダイエットはしていない
■十分な睡眠時間をとっている


【運動】

■昼間はよく外出する
■外出時は歩くことが多い
■こまめに家事をしている


【食生活】

■ほぼ毎日、牛乳を飲む
■肉や魚を毎日食べている
■コーヒーを1日に何杯も飲まない
■アルコールは少なめでたばこは吸わない
■インスタント食品に頼っていない


該当数が半分以下の人は骨が弱くなっている可能性がある。
3分の2以下の場合は予防を心がけたい
(注)葉梨さんの話を基に作成



2007.9.1 日本経済新聞