干しシイタケ、なぜ「生」の3倍高

鍋や煮物、めん類のつゆに使うといい味を出す干しシイタケ。国産品の平均卸値は2006年、1キロ約3700円だった。国産の生シイタケは1100円前後。単に乾燥させただけで値段が3倍以上になる秘密はどこにあるのだろうか。

干しシイタケの作り方は単純だ。生シイタケをかごに入れ、石油バーナーを使って20−24時間乾燥させると出来上がる。

水分を飛ばすことで1個当たりの重さは生シイタケの10分の1になる。逆に言うと同じ重量の干しシイタケを出荷するには10倍の摘み取り作業が必要。コストは余分にかかっている。

栽培法も違う。乾燥用のシイタケは昔ながらに山中に原木を並べて育てる場合が多い。日差しを調整するため山林の手入れも必要だ。一方、収穫から出荷まで時間をかけられない生シイタケ向けはハウス栽培も多い。ハウス内ではおがくずを詰めた瓶などを使って簡易に栽培する。

干しシイタケは「手を加える余地が多い分、その手間を価格に反映させやすい」(岩手の生産者)という。品評会の入賞クラスだと卸値は平均の6倍の2万円台にもなる。生シイタケなら品質による価格差は「せいぜい2倍」(東京都内の青果卸)程度だ。

干しシイタケが高い理由はほかにもある。生に比べて栄養価が高まるのだ。まず骨を強くするビタミンDの含有量が増える。うまみ成分であるグアニル酸も増加する。だしをとるのに使うのはこの付加価値があるからだ。保存性も高い。

生シイタケよりは高いものの、国産干しシイタケ価格はここ十数年低迷してきた。国産の半額以下という中国産の流入が響いた。現地で乾燥してから輸入される中国産干しシイタケは今や国内市場の約7割を占める。消費者の干しシイタケ離れも追いうちをかけた。数時間かけ水で戻す調理の手間が嫌われ、市販のだし汁に押され気味だった。

しかし国産干しシイタケの卸値は現在、5000円と前年同期比で4割上昇した。安全面から中国産シイタケを避ける動きが出てきたことが背景。「国産干しシイタケの奪い合いも起きている」(都内の卸問屋)。中国産比率が約2割と小さい生シイタケでは前年に比べた値上がりは1割にとどまっている。

シイタケでも消費者は安全性を意識し、国産品や天然素材を求める機運が高まってきた。市場関係者からは「国産干しシイタケの魅力をアピールし消費拡大につなげたい」(乾物問屋の不二食品産業の橘幸治社長)との声が増え始めている。

 

2007.10.13記事提供:日経新聞