メントール、代謝酵素に影響 - ワルファリンとの相互作用注意



 食品や医薬品中に含まれるメントールは、肝臓の薬物代謝酵素CYP2Cの発現を誘導し、抗凝固薬ワルファリンの代謝を促進して、その効果を減弱させることが明らかになった。星薬科大学薬動学教室の杉山清教授らの研究グループが動物実験でそのメカニズムを解明した。

 

 メントールは、矯味剤、香料、医薬品として使用されている。ワルファリン服用患者がメントール含有のど飴を摂取したところ、ワルファリンの抗凝血作用が減弱した事例が2010年に報告された。これを受けて杉山氏らはその仕組みの解明に取り組んだ。

 ワルファリンは主にCYP2C、CYP3Aによって代謝される。このうちCYP2Cに着目し実験を行った。

 マウスにメントール(10mg/kg)を2日間経口投与し、最終投与24時間後にワルファリン(10mg/kg)を経口投与したところ、メントール投与群の血漿中ワルファリン濃度は投与4時間目以降から、コントロール群に比べて低下。メントール投与群のワルファリンの薬物血中濃度―時間曲線下面積(AUC)は、コントロール群に比べて約25%低かった。

 また、マウスにメントール(10mg/kg)を2日間経口投与し、最終投与24時間後に肝臓を摘出して調べたところ、同群のCYP2Cの発現量はコントロール群に比べて有意に高かった。同群の核内CAR発現量もメントール群は有意に高かった。

 さらに、ヒト肝細胞由来のHepaRG細胞にメントールを添加して24時間培養したところ、CYP2C9のmRNA発現量は濃度依存的に増加していた。

 杉山氏らは、同様の手法でメントールがCYP3Aの発現を誘導することも明らかにした。マウスにメントール(10mg/kg)を7日間経口投与し、CYP3Aによって代謝されるトリアゾラム(5mg/kg)を最終投与24時間後に経口投与したところ、メントール投与群のトリアゾラムのAUCは、コントロール群に比べて約40%低下していることが分かった。

 これらの結果から、メントールは肝臓のCYP2CやCYP3Aの発現を高めて、ワルファリンやトリアゾラムなどの代謝を促進し、その効果を弱めることが示唆された。CYP3Aの基質となる薬物で治療域の狭いものや、ワルファリンを使用する際には、メントールの使用に注意する必要があるとしている。

 今後、杉山氏らは医療従事者への注意喚起を推進するほか、メントールの併用によって医薬品の効果が弱まった事例を臨床現場から収集したい考えだ。

 

提供:薬事日報 2014年7月11日(金) 配信

2014年9月10日更新