私の彩食健美論
C.W.ニコルさん

納豆が大好きだとか。
最初に食べた時から気に入った。最近は食べ方にもこだわっている。良いタマネギを細かく刻んでメカブをちょっと、これと卵を納豆に混ぜてしょうゆをかけ300回かき回す。冷蔵庫に30分から70分入れておく。食べる前にも200回。熱いご飯をこれで食べるのが最高だ。イギリスには「ビーンズ・オン・トースト」という子どものおやつがあるが、納豆もこれと同じようにパンと食べてもいい。

子どものころから和食と接点があった。
ウェールズのおばあちゃんは、白身の魚を焼くときによくしょうゆを使っていた。あとオリーブやレモン。日本でいえば明治時代の人だったけど、この地域は大昔に地中海の沿岸と交流があったので、オリーブとレモンを伝統的に使うのは分かる。なぜしょうゆを使うのかは分からなかったけど、そういう家庭に生まれたことが、今の自分に影響していると思う。

カエデの木まで楽しんでいるそうですね。
「アスファンの森」の面倒を見てくれている松木信義さんがメープルシロップに凝っていて作ってくれる。ウリハダカエデの樹液を取って、まきで煮詰める。50分の1に煮詰めるとまだ水っぽくて、80分の1になるとドロっとした感じになる。薄いメープルシロップにユズを混ぜて氷を入れて飲むと本当においしい。カナダのよりうまいと思う。

苦手なもの、あるんですか?
子どものころはニンジンやセロリが駄目だったけど、12歳ごろから何でも食べられるようになった。今は、うーん、ブランド肉でよくある霜降り牛肉は勘弁してほしい。あれは肉じゃなくて、脂肪を食べているのと同じだと思う。野生の肉は脂肪が少なく、ちょっとだけ食べれば足りる。

京都で「もったいないクラブ」を開いている。
おいしい食材なのに無駄にされているものが、日本にはたくさんある。それを工夫して食べてやろう、という趣旨に賛同して京都の料理人たちが集まった。
食材は例えば害獣駆除で狩ったシカとか、有機農法に使って後は処分されるしかなかったアイガモとか。去年は利尻のコンブ。コンブは数年たったものを出荷するが、大きく育てるために間引きをする。この間引きした若いコンブを使っていろいろ料理を考えてもらったが、本当にうまかった。ちょっと規模が大きくなりすぎたので見直そうとは思っているけど、食材を大事にする考え方は必要だと思う。


2006.5.5 日本経済新聞