脂肪摂取と病気の発生の関係がよく論議されるが、少なすぎても、取り過ぎても問題が起きる。前者の食事パターンは、かつての日本人が行なってきた塩からいおかずで、ごはんを沢山摂り、肉類と脂肪(飽和脂肪酸)の少ない食事だ。この場合は、血中総コレステロール値が低くなりやすい。こうなると血管が弱くなって脳卒中、特に脳出血が起こりやすくなる。

後者の食事パターンは、欧米型で肉好き、あるいはファストフード好きに多い。とりわけ動物性脂肪の摂取が多い食事で、飽和脂肪酸が多くなり、結果として血中総コレステロール値が高くなって心筋梗塞の危険度が高くなる。

脂肪摂取量は世代別に差があり、青年層で摂取過剰である反面、中高年層では不足気味という傾向がある。脂肪の好ましい摂取量は、エネルギー比で20−25%以下の人達は炭水化物摂取が相対的に増加しており、血中中性脂肪の増加、食塩摂取の増加、及びカルシウム不足が起こる可能性が高い。

上限値の25%以上の人達は肥満、糖尿病、高コレステロール血症が起こる可能性が高い。好ましい摂取量といえる人の割合は日本人の3分の1程度。そして過剰摂取の人の割合は32%、逆に不足者は34%に及ぶという。

これを是正するためには、当然のことながら過剰摂取の人は肉や脂肪の量を減らし、そのかわりに野菜を沢山摂る。不足している人は肉や脂肪を十分に摂る。一言でいえば現在日本人が行なっている、肉や脂肪を適度に摂る和洋折衷の食事が好ましいということになる。

(新宿医院院長  新居 裕久)
2006.5.13 日本経済新聞