アメリカ人に肥満者の多いことはよく知られた事実。その大きな原因は、肉や脂肪を沢山とっているからだとされているが、実は、これと一緒に清涼飲料、ジュース、ポテトフライ、ケーキなどの炭水化物食品を同時に大量にとることが肥満に拍車をかけているのだ。

この点については、早稲田大学スポーツ科学学院の鈴木正成教授らがラットを使った実験によって裏付けている。雄雌のラット60匹を2群に分け、1日に2色の食事をさせた。1群では夕食に高脂肪食と砂糖を与え、朝食では高炭水化物をとらせた。対象群では夕食に高脂肪食のみ、朝食で高炭水化物と砂糖をとらせた。

6カ月後、体脂肪のつき具合を比較してみたところ、雄ラットでは脂肪と砂糖同時摂取群では99グラム、別々摂取群では83グラム。雌ラットでは同時摂取群は48グラム、別々摂取群では34グラムと明らかな差がついた。

なぜこんな結果がでたのだろうか。血糖上昇反応の大きな炭水化物食品や糖分を沢山とると、インスリンの分泌が高まる。インスリンによって脂肪組織でリポたんぱくリパーゼが強く活性化されるため、血中脂肪を体脂肪として貯蔵しやすくなる。そこで食事から摂取された脂肪が血中を大量に流れると、効率よく体脂肪が蓄積されやすくなると考えられる。

ということになると、高脂肪食をとるときには炭水化物食品(砂糖や穀類、芋類、甘い果物など)の同時とりすぎを抑え、それにかえてローエネルギーの野菜をしっかりとることが肥満の予防、治療のポイントと考える。

(新宿医院院長  新居 裕久)


2006.6.3 日本経済新聞