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根尖病巣など、嫌気性菌群の疾患:「忘れられない悪臭」ガス壊疽


東京医科歯科大学、研修医セミナー

「骨・関節・脊椎の感染症」

死に関わるガス壊疽。四肢切断もある壊死性筋膜炎。
さまざまな症例を通して、その治療法を紹介する。
東京医科歯科大学医学部附属病院、整形外科の吉井俊貴氏が解説。
まとめ:星良孝(m3.com編集部)

致死的なケースも多いガス壊疽

講師は、東京医科歯科大学整形外科の吉井俊貴氏。

 それから、少しまれな症例を紹介します。ただし致死的なケースも多いので重要です。これはガス壊疽です。聞いたことがあるかもしれないですが、起炎菌としてはクロストリジウムが有名です。ただ、クロストリジウムでなくても起こります。高気圧酸素療法が非常に有効です。特に嫌気性の場合、高気圧酸素療法は酸素分圧を上げて、αトキシン産生を抑制します。

 

ガス壊疽
ガス壊疽

ガス壊疽
ガス壊疽

 これは高気圧治療で有名な川蔦先生から提供していただいたガス壊疸の症例です。ガス壊疽は私も致死的なケースの経験があるのですが、急速に進行して腎不全などを併発して致死的となるケースも多いです。とにかく、ちょっと怪我したということで受診し、翌日にはもうこのような状態に進行することもあります。このように、軟部組織内のガスがレントゲンやCTで認められたり、ちょっとつかんでみると、ばりばりという音がしたりする感じが特徴的です。また一回嗅いだら忘れないような臭いも特徴的です。治療はとにかく早期の洗浄、デブリドマン、進行が急激なので、疑ったらすぐ開けて膿を出さないと、致死的となってしまいかねません。

ガス壊疽
ガス壊疽

白血球の作用の増強
白血球の作用の増強

 ご存知かもしれませんが、当院には大きな高気圧酸素治療用のタンクがあり、感染の治療にも使用しております。柳下和慶先生が担当されております。高気圧酸素療法を行うと、4割近いガス壊疸の致死率が、2割程度に半減するという報告もあります。

壊死性筋膜炎には高気圧酸素治療が有用

壊死性筋膜炎
壊死性筋膜炎

 次に壊死性筋膜炎、これもご存知の先生方も多いと思います。主にA群溶血型レンサ球菌で報告されておりますが、いろんな菌で起こります。このように皮膚、皮下から、筋膜にかけて急速に壊死が進行します。

壊死性筋膜炎
壊死性筋膜炎

 私も以前に経験したことがありますが、進行が急速ですので、出来るだけ早くデブリドマンを行う必要があります。患肢の切断を要する症例もあります。致死率が4割近いという報告もあります。こちらも高気圧酸素治療が有用で、致死率を著明に改善させられるという報告がされています。

骨髄炎に有用な持続潅流システム

 骨髄炎は、主に慢性的に骨に感染がおこり、難治性です。

慢性骨髄炎
慢性骨髄炎

掻爬・局所持続洗浄療法
掻爬・局所持続洗浄療法

 治療は抗菌薬の投与に加え、洗浄やデブリドマンはもちろん必要ですが、持続の洗浄が有効です。これは川蔦先生が考案された持続潅流システムの写真です。潅流チューブがつまりにくい様々な工夫がなされております。

慢性骨髄炎に対するHBO
慢性骨髄炎に対するHBO

骨髄炎治療成績
骨髄炎治療成績

 スライドに示すように慢性骨髄炎に対する高気圧酸素治療の有用性も報告されております。このように高気圧酸素治療は、骨関節、脊椎の重症感染症、難治性の感染症に効果があり、当院では積極的に行っております。またこのような感染症に限らず、術後の創部感染などにも有用で、治療に役立てております。

「骨・関節・脊椎の感染症」

Vol.1◆化膿性関節炎は治療歴に注意
Vol.2◆今増える化膿性脊椎炎
Vol.3◆飼い猫咬傷や術後、腫脹を手術
Vol.4◆小児関節炎、重大後遺症も
Vol.5◆「忘れられない悪臭」ガス壊疽
Vol.6◆開放骨折、骨髄炎を防げ(12月18日公開予定)
Vol.7◆現代こそ旬の整形外科医(12月20日公開予定)

「骨・関節・脊椎の感染症」
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Vol.5◆「忘れられない悪臭」ガス壊疽
Vol.6◆開放骨折、骨髄炎を防げ(12月18日公開予定)
Vol.7◆現代こそ旬の整形外科医(12月20日公開予定)

 

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2013年12月16日 提供:まとめ:星良孝 氏(m3.com編集部)