書き直した終末期調査書 「自然なみとり」に× 「私たちの最期は」「延命治療どこまで」

参考:2016年5月6日 (金)配信共同通信社

 97歳になる前田(まえだ)キヨ子(仮名)の終末期医療をどうするか。2015年8月、めいの伊藤典子(いとう・のりこ)(66)=仮名=は身元引受人として、叔母が入院する上町(かみまち)病院(高知市)で調査書への記入を求められました。いくつかの質問が並び、選択肢に○×形式で答えていきます。  「避けられない死が近いときは、本人の意思に沿う」。ペンで円を描きました。「できる限りの救命、延命治療を受けたい」の項目は×としました。  食事に関しては二つの選択肢がありました。「最後まで口で食べることを大切にして、自然な経過でみとりたい」と「経管栄養(人工栄養)にて栄養補給をしてほしい」です。  「延命拒否」と書いた紙を残していた叔母の希望に沿うのは、前者だろう。典子は迷った末、こちらに○を付けました。  ただ、このときキヨ子は既にほぼ植物状態で口から食べることはできず、栄養と水分はチューブで体内に取り込む「胃ろう」や点滴に頼っていました。「自分の選択は叔母をすぐ死なせることになってしまうのではないか」。いったん記入した後で、典子は言いしれぬ不安に襲われました。  その場で、既に記していた○印の上に×を書き込みます。「経管栄養にて栄養補給」に○を付け直しました。命の重みを考えると、胃ろうや点滴を中止する決断はできませんでした。叔母は胃ろうを取り付けたとき、判断能力が十分残っていたのに拒否しませんでした。ということは、書き置きの後で「やっぱり生きたい」と気が変わったのかもしれません―。  病院側はこの調査書のやりとりの際に初めて、延命を拒む書き置きの存在を知ることになりました。ですが、キヨ子は上町病院に入院してから4年ほどは意思疎通できる状態でした。終末期医療の在り方について、本人に尋ねたことはなかったのでしょうか。  「うちに入院したとき、胃ろうは既に取り付けられていたんだから『チューブ、抜きますか』なんて聞けない。90歳を超えた人にそんなこと聞く必要ないでしょう」。キヨ子の主治医、広瀬良江(ひろせ・よしえ)(68)=仮名=は質問自体が意外そうな様子で答えました。  上町病院では多くの患者が胃ろうなど人工栄養を付けています。ここ数年高まる胃ろう批判。広瀬と院長の田中誠(たなか・まこと)(71)は自らの考えを話し始めました。(敬称略)
Dr.堤より 自分の死の時、親や、兄弟、配偶者の死の時、どういう死に方をしたいか?また、残すことは何か?