微妙なしぐさをとらえよ◇患者さんが考えていること

参考:2015年1月9日 配信 m3.com 臨床道場

患者は最大の情報源であり、数値ではなく、患者を診て実際に触れて、最適な答えを紡ぎだす――視診や聴診、触診、打診…などにより、限られた状況で的確に診察を進めるコツを川村内科診療所(横浜市)所長 川村昌嗣氏は語ります。 ◆聴診時の「雑音」を気にする患者
わたしが学生のころからある内科診察の教科書の1つである「臨床診断学 診察編」(医学書院)では、呼吸器の聴診の練習法の記載で下記の様な説明があります。 「正常の安静呼吸では、ほとんど呼吸音が聴きとれないから、深く吸気を行わせ、呼気は受動的に呼出させる。意識的に早く呼出させると、呼気の延長が生じたりして呼吸時間に誤った印象を与える。またくちでハアハア音を出させないように注意する」 実際の診察で分かるのですが「深呼吸をしてください」と言っても、かすかな呼吸しかしない患者さんが結構多いものです。実はこれには患者さん側の配慮があるのです。呼吸器の症状がある患者さんは、深呼吸をすると咳が出るので、医師が聴診している間は、咳が出ないように呼吸をしているのです。聴診が終わった後に咳をする患者さんを見て、このことに気が付きました。患者さんから聴くべき呼吸音は、咳が出る呼吸の音なのです。
自身が気管支喘息だという川村氏は、気管の過敏性が出始める時の呼吸の変化、過敏性が進んできた時の呼吸の変化を理解しており、患者さんのその些細な呼吸音の変化を見つけるためには、聴診の最後に、努力呼出をしてもらうことが必要とのこと。 今までの医学常識にとらわれず、目の前の患者さんの些細なしぐさを注意深く観察することにより、有益な診察方法が見つかるもの、と川村氏は言います。 また、川村氏の診療所では、「先生のところの薬は良く効く」と言われるとのこと。その理由として、
  1. 生活の注意点が効果的で、薬の効果がより発揮されやすかった。
  2. 想定した病態や病勢が合っていて、薬の効果が発揮されやすかった。
  3. 病態の説明が分かりやすく、体調の変化が話した内容に沿って改善した。
  4. たまたま病態がいつもの状況よりも軽かった。
の4つを理由として自身で述べています。 薬剤の処方の際の注意点としては、例として、発熱を主訴として来院した患者さんへの処方を挙げています。 熱が出る原因を分かりやすく説明し、解熱剤を出さない理由を理解してもらうのだとのこと。 解熱剤を安易に処方してしまうと、高熱状態の患者さんにとっては辛い原因が発熱のためだと思い込み、いざという時のための解熱剤を気軽に飲んでしまう事が少なくないのだと言います。 ルーチン化した診察は見落としを減らすために有効な方法ではありますが、患者さんから発せられる情報から、気づきにくい徴候や所見を拾うためには、目の前の患者さんの微妙なしぐさをとらえることが大切です。
Dr.堤より 患者さんが発するすべての情報を、バイアスなしに、考察し、診断に活かす術を学ぶ。