飲めずに「残薬」、山積み 高齢者宅、年475億円分か

参考:2015年4月8日(水) 配信 朝日新聞

高齢者宅から、処方されたものの適切に服用されず「残薬」として薬が大量に見つかる、といった事例が目立っています。 多種類の薬を処方された場合に飲み方がわからずに適切な服用ができないなどで、症状が悪化し、さらに薬の処方が増える悪循環に陥るケースも。 そういった「残薬」は年400億円を超えるとの推計もあり、薬剤師が薬を整理し、医師に処方薬を減らすよう求める試みが広がっています。 薬剤師が高齢者を担当するケアマネージャーに相談を受け高齢者宅を訪れると、10年前処方された薬が放置されていたり、「残薬」として残っていた薬が1千錠を超えるなど、価格にして25万円分を超える処方薬が見つかるといった事例も。 高齢で認知能力が落ちている上、複数の主治医にかかっているなどで処方される薬が多く、自己管理が難しいためにこうした事例が起こってしまいます。 在宅患者や医療関係者に薬の扱い方を教える一般社団法人「ライフハッピーウェル」(大阪府豊中市)の福井代表理事によると、1日3食分の薬を処方されながら食事が1日1食で薬がたまる高齢者や、複数の薬を処方され、「何をどう飲めばいいのか分からない」と90日分も残薬があった糖尿病患者などの事例が各地で報告されています。 日本薬剤師会は2007年、薬剤師がケアを続ける在宅患者812人の残薬を調査。患者の4割超に「飲み残し」「飲み忘れ」があり、1人あたり1カ月で3220円分が服用されていなかったという報告もあります。 金額ベースでは処方された薬全体の24%にあたり、厚労省がまとめた75歳以上の患者の薬剤費から推計すると、残薬の年総額は475億円にも上るとのことです。 慢性病の患者を診ている医師4215人が回答した日本医師会のアンケート(10年)でも、36%が「患者の飲み忘れや中断で症状が改善しなかったことがある」と答えています。 医師で日本在宅薬学会の狭間理事長は「薬を飲んでいない患者に、飲んだことを前提に対応しているわけだから、治療自体が崩壊する。薬代も無駄になる」と話します。 薬の処方が必要異常に膨らめば、社会の高齢化が進む中で医療費の拡大も危惧されます。 残薬を減らすため厚生労働省は昨年、薬剤師が受け取る調剤報酬の規定を改定。「薬剤服用歴管理指導科」の条件のひとつに、薬の飲み残しがないか調剤前に確かめることを盛り込みました。 しかしながら、店頭で薬剤師が口頭で尋ねるのが大半で、厚労省医療課は「家まで行って服用を管理するなど、薬剤師がどれだけ在宅医療に踏み込むかが検討課題」だと言います。 そんな中、各地では対策が始まっています。 福岡市薬剤師会は「節薬バッグ運動」を進めており、市内31薬局で12年、バッグ1600枚を患者に配布し、残薬の持ち込みを呼び掛けたところ、約3か月で患者252人が約80万円相当の残薬を持ってきたとのこと。薬剤師が整理し、安全性が確認された約70万円分の薬を使ってもらいました。 13年には参加薬局を約650薬局に拡大しています。 小柳担当理事は「残薬は調べると想像以上。今後も飲み残しを持ち込んでもらい、残薬を減らしたい」と話します。 高知県でも昨年10月、県内72薬局で残薬を患者に持ち込んでもらう取り組みを始めています。県医事薬務課は「残薬の整理だけでは原因は分からず、薬剤師が出向いて解決のきっかけにしたい」とのことです。 亀井日本大薬学部教授は、残薬の理由は複雑だと話します。 「高齢者が一人暮らしで相談相手がいないことや、処方された薬の多さ、使用法の煩雑さなどが絡まっている。結果的に治療効果が得られず症状が悪化し、不要な薬を追加されることもある、かかりつけの薬局などに相談し、薬の種類や飲み方を見直してほしい。」
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