歯科報酬資料改ざん:偽装指南、微に細に

参考:2016年11月4日 (金)配信毎日新聞社

コーヒーに浸して古さ装う/レントゲンを色鉛筆で修正

偽装した書類をコーヒーに浸して古びたように見せ、レントゲン写真は色鉛筆で修正。診療報酬の不正請求を調べる厚生労働省の「個別指導」を巡り、元厚生官僚(65)が歯科医に指南した「偽装工作」の詳細な手口が、内部資料や関係者の証言で分かりました。現役時には「医療Gメン」と呼ばれ、指導を取り仕切っていた元官僚。歯科医は助言に従い資料改ざんに手を染めたが、最後は「医師の名義借り」まで指南され「ひどいことになる」と考え相談をやめたといいます。【藤田剛】 2014年11月10日、元官僚が経営する神奈川県のコンサルタント会社(現在は東京都に移転)から大阪市内の歯科医院に1枚のファクスが届きました。歯科医院は10日後に厚労省近畿厚生局の個別指導を受ける予定で、元官僚に相談。ファクスはその事前準備を細かく指示していました。「伝票の照合作業を行い、不一致が生じた場合には訂正依頼をする」「訂正分カルテを業者に依頼し18日までに新カルテの入力作業を行う」 元官僚が泊まりがけで来院すると作業は本格化しました。歯の治療を装うためレントゲン写真の上から銀の色鉛筆で着色し、2年以上前の書類を作り直す際は水で割ったコーヒーに漬け、ドライヤーで乾燥。指示内容をまとめた内部資料にはこんな記載もありました。「検査の数字はいろいろな太さで書く。同じ日に全部書いたのではないことをアピールする」「技工所(義歯などの加工業者)には納品書の書き換えなど協力を要請しておく。1枚5000円が謝礼の相場」 個別指導は翌年以降も続き、厚労省から特に不正が疑われたのは高齢者施設などに出向く「訪問診療」関連の請求でした。訪問診療は20分未満なら報酬が大幅に下がるが、実際は20分未満なのに20分以上と装い請求していました。個別指導でつじつまを合わせるには医師の数が足りませんでした。 院長によると、元官僚から「他院のドクターから名義を借りる」「20分以上と証明するには『認知症で治療開始まで時間がかかる』などのストーリーメークが必要」と助言され、一時は虚偽の資料作成を始めました。別の歯科医院の協力も得られる見通しだったといいます。 院長は「言う通りにやっていたら、運が良ければウソを貫き通せるかもしれないが、少しでもつじつまが合わないとめちゃくちゃひどいことになる。『これは丸わかりやん、あかんな』と思った」と話しています。結局、名義借りをあきらめて元官僚への相談もやめ、元官僚に支払った謝礼は約50万円だったといいます。

◇歯科医院>コンビニ 20年で1万カ所増

厚生労働省調査(2015年)では歯科医院は全国に約6万8700カ所で、20年前より約1万カ所増えました。コンビニエンスストア(今年9月時で5万4400店余)より多く「経営は厳しい」(ある開業医)といいます。厚労省は新規開設医を含めて年間約3000件の歯科に個別指導を行い、10~14年度に保険医登録の取り消し処分(取り消し相当含む)を受けた歯科医師は88人。医師の46人や薬剤師の18人を上回ります。 保険医登録を取り消されると原則5年間、保険診療ができないため、インターネット上では「個別指導対応」をうたうコンサルタントなどのホームページが増えています。ただ、現状でコンサル業を規制する法律はありません。